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じんわりと汗ばんできた、気がする。
人の汗なんてどれだけ仲が良かろうと不快じゃないのだろうか、少なくともわたしは自分のに触れさせたいとは思わない。
「そんなに暑いならクーラーつけようよ」
「エアコン操作の権利は家主のわたしにあります。却下です」
「えー」
「わたしが薄給なのも知ってるくせに」
「家主権限出されると勝てないんだよなぁ」
起床予定時間まではまだあるし、快適な状態でもう少し寝たい。
そろそろ引っペがすかと力を込めた両腕は、運動に縁のないモヤシとはいえ成人男性には及ばなかった。
ちくしょう。
「いい方法を思いついたんだけど聞く?」
「なによ」
「一緒に住もう」
「……………は?」
「それで電気代は僕がもてばいいの。そうしたらAも文句ないし、涼しいところでくっつき放題だと思わない?」
名案だとばかりに自分で頷いている。
「本気?」
「何呆けてんの。Aは今後僕から離れていく予定ある?」
「いや、別に無いけど」
どこかふわふわ浮世離れした彼こそ、いつか飽きてふらっと何処かへ行ってしまってもおかしくないなと、何となく思っていたから。
「じゃあいいじゃん。僕だってね、こう見えて好きな人とのこれからの事はいろいろ考えてるんだよ」
そろそろいいかなーと思って、と笑う拓哉。
何だそれ、ときめいてしまうじゃないか。
「でもそれと今くっつくことは話が違わない?」
「あっバレた」
誤魔化せると思ったのに、と嘯く恋人に、今度は自分から抱きついて胸に顔をうずめる。
「お」
「…次休みが合ったら不動産屋ね」
「そうだね。ありがとう」
頭上で聞こえる声が嬉しそうだ。
やっぱり暑い、けど、もう少しこのままで。
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あんこ餅(プロフ) - カルボンさん» ありがとうございます!思いがけず豪速球をはなってしまった…気に入っていただけて嬉しいです、ゆるっと頑張ります! (2020年6月14日 16時) (レス) id: 14d7e5e3b6 (このIDを非表示/違反報告)
カルボン(プロフ) - こんにちは!最高すぎてコメントせざるを得ませんでした。今のところkwmrさんがストライクゾーン165km/hのストレートです。お疲れのないよう、執筆これからも頑張ってください!応援しています。 (2020年6月14日 15時) (レス) id: 6c016596a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんこ餅 | 作成日時:2020年5月27日 22時