らくだい魔女と両思いのち片思い〜奇跡が起こる瞬間に〜

光の魔女 ページ38

フウカside



ガートが慌てて何やら呪文を唱える。その瞬間、あたしの足が重くなって止まりかけた。



でも、そんなのも振り切ってもう一度走り出す。



目の前のガートの偽者を睨み付けた。あたしが進む先には、あたしを操ることに躍起になって無防備に空いたガートの懐がある。



だけど、ガート自身は気付いていないのか、ブツブツと呪文を唱え続けていた。



少しずつ体が重くなってきて、手も痺れてくる。



それでも、あたしは力を振り絞ってダン！と大きく床を蹴った。



体中の魔力を真ん中に集めて、息を吸い込む。ガートがビクッと肩を揺らして剣を避けるために身構えた。



けど、あたしは、



刃が届く、その一瞬前に






剣を、投げ捨てた。



代わりに体中に溜めていた魔力を一気に吐き出すイメージをする。



そして───。



フウカ「風よ……光の魔女、フウカが命じる──。」





*





フウカ「彼の者の悪を祓い、在るべき者に還したまえ──！！」






ガートに向かって手を伸ばす。あたしの手のひらから溢れでた光が、ガートを包んだ。



フウカ「お願い………ガート、戻ってきて……！！」







勢いのままガートと一緒に倒れ込んだあたしの隣から、黒い靄のようなものが吹き上がる。



その靄は、まるでもともと決まっていたかのように一点に向かっていき、消えた。



代わりに、ガートの胸の辺りから光が溢れ、数秒光り続けたあと、吸い込まれるように消えていった。



あたしはその光景を、倒れたままボーッと眺めていた。


*

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