後ろ姿 ページ7
銀さんの声と共にもの凄い砂埃とドンという何かへの衝突音
目の前で起こったことを理解するまで数秒かかったけど
男性客を私から引き離して、そのまま団子屋の外壁に投げ飛ばしたみたいだ
銀さんは目と眉の距離が近くキリっとした顔をしてて、怒っていて少し怖いけど、すごく頼もしい
ごく自然に私の前に立ち男性との距離を取ってくれる
客「いってぇ…何すんだよいきなり!」
銀「物事が起きるのはいつだっていきなりだ、覚えとけ」
客「てか、お前は誰だ!」
銀「その小せぇ肝っ玉に刻み込んでおけ
俺はAの旦那だクソ野郎」
荒々しく子どもの喧嘩の様な言葉に対して、銀さんは語気を荒げることもなく冷静に言葉を返していく
そんな銀さんに徐々に押し負けていく男性客の姿には目も当てられない
知らない人をも圧倒する、何とも頼もしい後ろ姿を持つ男に守られているのだと思うと嬉しくてならない
そしてさらっと誇張してた "旦那" というフレーズが
何度も頭の中で繰り替えされれば、1人、甘い世界に誘われ、
赤面が止まらず今のこの状況にそぐわない
そんな私をさておいて銀さんは止まらず、未だに尻もちをついている男性客に近寄り、腰にさしてある木刀を抜き、切先を喉に向ける
銀「お前がどこでどんな奴 口説こうが構いやしねぇよ
だがな、この剣が届く範囲にあるのは俺の護る大切な女だ
奪ってやろうってなら正々堂々 正面から来い
そん時は相手してやらぁ」
銀さんが一体どんな表情でこれを言ったのかは分からないけれど
男性客は獣を見た草食動物のようにその場から立ち去った
私もそれに圧倒され呼吸をするのがやっとだ
木刀を再び腰に戻し、私に向ける表情はたぶんさっきまでのものではなく、随分と優しい
親父さんや他のお客さんから賞賛やら感謝やらが瞬く間に送られ、銀さんは慣れていないのか若干引き気味だ
そんな中でも私を見てふっと優しく微笑む銀さんはやはり抜け目ない
それがとっても悔しくて愛おしい
「そこだと私、銀さんの剣の範囲から出てます」
銀「ほんと生意気な女
これで満足か、お嬢さん」
「ふふ、満足です」
剣どころか片手で届く範囲で、銀さんの腕に抱かれる私はきっと狡猾な女だ
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時