秘密 ページ5
- 銀八side -
今日も懲りずにAの元へ足を運ぶ
もう起きて、俺のことを揶揄ってるんじゃないかと思うくらい以前よりも表情が穏やかになって、俺の声にも反応が見えるようになった
それが嬉しくて仕方ない
八「A、おはよ」
「…」
「おはよう」と返事が来た気分になるのは何故だろう
くるくるとAの髪を指に絡めてやれば懐かしい記憶が蘇る
――――
―――
――
―
「せ、先生?」
八「なに」
「何してる…の?」
八「遊んでる」
Aがまだ高校生の頃、
俺の部屋兼国語準備室に来る此奴の髪をくるくると弄ぶのが日課
勝手に置いた小さいソファにAを半ば強制的に隣に座らせて、教師と生徒にしては近い距離もここにいる時だけの秘密
何度もこのソファに座らせているのに、此奴は慣れないらしい
俺はだらりと背もたれに体重を任せているのとは対照的にカチリと身体を強張らせ、背筋を伸ばしていたり
Aに触れれば、びくっと大きく肩を震わせて一気に耳まで赤くさせたりと
反応が初々しくて俺を煽り立てているのを此奴は知るわけもない
もっと触れたいと思ってまた手を伸ばそうとした時、いつもストップをかけるのは
「彼女さん、いるんでしょ?」
八「おー…」
俺が作り出したもう一つの秘密
「浮気はダメだよ」
八「こんなの浮気に入ってたまるか
調子乗んな」
「大人は難しいんだね」
八「餓鬼には分からねぇよ」
ズビシとデコピンをすれば、痛いはずなのに「へへへ」なんて満足そうな表情をする
―
――
―――
――――
八「お前はマゾストーカーか」
堂々とストーカーしてたくせに、俺が手を出せば紅潮して身体を固くさせてた
此奴のちぐはぐな行動と反応が、ころころ変化する表情はいつ見ても飽きないし、もっと知らない表情を見たいと思った
そんな俺を掴んで離さなかったAの表情や行動が今は見れないことに少し腹が立って
あの時より幾らか軽くAの額にデコピンを食らわす
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時