新婚 ページ30
役所に紙切れを提出して晴れて結婚が認められたその足で役所よりワクワクする場所へ車を飛ばす
私も銀八も赤信号が煩わしい程にワクワクしていて子どもみたいだ
車内での会話は「なんのパフェにする?」で持ち切りで、とても新婚とは思えない
半日前くらいに退院してプロポーズをこなし、役所に届けるを一日でやってのける
常識的に考えて数日以上はかかること
なんとも考えられないくらいにエネルギッシュな一日だった
そんなエネルギーは尽きることなくパフェを食べることに全力を尽くしている今この瞬間はとても頓珍漢だろう
落ち着いた雰囲気の喫茶店が目に留まり、そこにしようと満場一致
普段だらけきっている彼からは想像もつかないくらいに生き生きとした横顔が銀さんと重なって少し切なくなったのは内緒の話
店内は外装からも予想がついたけど今の気分が昂っている私たちとは正反対の落ち着きよう
浮いている、そんなことも気にならないくらい私たちはメニューに輝くパフェを選ぶのに夢中だ
八「俺、苺パフェにするわ!
いや、チョコレートも捨てがたい…!」
「分かる、分かるよその気持ち
あ、じゃあこうしない?」
可愛らしい店員さんが持ってきてくれたのは、たくさんの苺とチョコレートがかかった1つのパフェ
1つを2人で食べようという算段だ
普段なら一人1つに決まっているが、新婚ハイが相まってこの新しく照れ臭い形を取った
2人揃って「いただきます」をして、一度口に入れれば甘みが脳まで響き幸福を呼ぶ
銀八も糖分に脳がやられたのか表情筋が緩み切っていた
2人してニヤニヤとしながら食べ進めていると
八「はい、あーん」
私の旦那さんは銀色のスプーンに苺とアイスをのっけて私の方へ向け、パフェよりも甘い甘い空間を作り出す
ついに糖分に脳が絆されたのかネジがぶっ飛んだのか、少女漫画で見たあの展開が私にも巡って来た
彼は目を細め口元は緩やかな弧を描き、とても穏やかで照れや恥という言葉を知らない、そんな純真無垢な表情だ
そんな顔をされては逃げることはできないし寧ろ積極的に行きたくなる魔法の空気感
それでも少し遠慮がちにパクリと口に含めば最初の一口より甘くて仕方ない、私の大好きな味に変化していた
こんな2人は傍から見なくたってただのバカップル
でもそんなバカになれてることが最高に幸せ
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時