薬指 ページ17
銀「A…」
「ん…は、銀さん…」
胃がもたれそうな甘ったるい空気の中で互いの愛おしい人の名前を啄む様なキスの合間に呼び合う
ねっとりと執拗な銀さんの口付けは離れることを知らないのか、たまの息継ぎでは酸素が足りない
銀さんが満足したところで唇が離されると酸欠の身体はじんじんと麻痺の感覚が残る
ふぅふぅと興奮した猫の様に呼吸を整える私と逃げる術を失った獲物で遊ぶ獣のようにニタァと不敵な笑みを浮かべる銀さん
新鮮な空気を吸い込もうとしたところで、再び銀さんと唇が重なる
とても大好きな唇の感触が感覚麻痺を再発させて銀さんに酔いしれる
銀さんの舌が私の閉ざされた唇をツゥーとなぞり口内に割り込もうとしてくる
そんな経験はしたこともなく戸惑ったけど、銀さんだったら大丈夫だと変な確信が生まれるから不思議だ
何度目かで侵入を許せば、銀さんの舌は私のものを絡めとり、甘い果実かのようにゆっくりと味わう
銀さんの動きに答えたくて銀さんの真似をして控えめに舌を動かせば、銀さんの瞳がより大きく開かれた
それが何かのスイッチを押したのか、私の頭を優しく包み、唇は離さないまま長椅子に押し倒される
銀「ほんと、愛してるじゃ足りそうにもねぇ」
「ん、ふ…銀さん」
銀「Aの声も身体も匂いも全部俺のにしてぇし
誰にも見せたくねぇ」
応答する余裕もなくて、銀さんは言葉を吐いては隙間を紡ぐように何度もキスをする
銀さんの言葉一つひとつが私の何かを刺激して疼いてのたうち回る
銀「本当はもっと余裕でいたいのにAを前にすると
情けねぇが、余裕なんざどこかに行っちまう」
余裕がないのは私も一緒でまた1つ同じ気持ちを共有する
好きが2倍3倍と増加して止まらず暴走しそうだ
終わらないキスに酸欠が増して視界が徐々にぼーっとする
今まで目の前にいた銀さんが、幻の中にいる銀八先生が重なっていく
銀「ずっと俺の隣にいてくれ」
そう言った後、左手を手に取り薬指にキスを落とす
八『ずっと一緒にいよ』
似た言葉を吐き、同じことをした銀八先生が脳裏に過る
私の胸をドキリと鳴らすのは銀さんなのか、それとも銀八先生なのか――
48人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時