虫 ページ14
銀さんとあれからも中身のない会話を繰り返していたら、不意に "ぐぅー" とお腹の虫が鳴る音がして夜になっていたことを知る
彼と過ごす時間はいつもあっという間に過ぎ去る
銀「ぶはっ腹 鳴ってんぞ」
「もう夜だからしょうがないじゃないですか!」
銀「Aも人間だったんだな」
「当たり前です、化け物みたいに言わないでください」
お腹が鳴ったは私の方であり得ないくらいに恥ずかしい
聞き流したり、フォローしたりとか色々あるのに
絶対に言わないと思うけど、まだ付き合いたてのカップルかのように「かわいい」とか言ってほしい人生だった!
銀さんだって分厚いオブラートに包んで喋ってるの知ってるんだから!
楽しい時間はあっという間のくせに恥ずかしい一瞬は永遠で、できることならばこの場所から立ち去りたい
「夕飯の買い物行きますよ!」と半ば強引にケラケラ笑っている銀さんを引っ張り上げ、背中を押しながら玄関へ強制送還
何気なく押した背中はゴチゴチとしていて、触り心地が良いとはお世辞にも言えないけど、
やっぱり私はこの人の背中が、頼らせてくれるこの後ろ姿が愛おしい
お腹の虫のせいで恥で塗れていても銀さんに触れるとちゃっかり顔を出す乙女な部分の私には感心する
外に出れば夕飯時というには少し遅い時間になっていたせいで辺りはすっかり闇に包まれ、
ポツポツと申し訳程度に街灯が夜道を照らしている
昼間にはまだ夏が滞在してる一方で夜は秋の装飾をし始めているようで、夜風が涼しく恥で火照った体を冷やしてくれる
煌々とした金色からお色直しをした銀色の月に照らされ夜風にあたりながら歩く銀さんは何とも言えない風情がある
どこかの草むらではリンリンと秋を知らせる虫が鳴く
銀「もう秋か、時間が過ぎるのは早いねぇ
…さっきの腹の虫もまた聞きてぇもんだ」
「わあ、風情あるお言葉ですね」
銀「あれ、ちょ、あれ?
もしかしてAちゃん怒ってる?」
「怒ってないですよ?ただ、趣のある言い回しだな、と」
銀「もしかしなくても怒ってたぁぁ!」
もちろん怒るわけなくて、銀さんを揶揄ってるだけ
「ごめん」と必死に謝る銀さんと、「何のことですか」とヘラヘラと笑いながらとぼける私たち2人は傍から見たらきっと付き合いたてのバカップルに違いない
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時