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教師失格 ページ21

銀八先生に抱き締められるのなんて、今まで散々恋愛ごっこしてきたのに初めてのこと



おめでとうの抱擁だなんて全然思えない、別れを惜しむような苦しいハグ








「せんせ、苦しい」



八「そうか」








苦しいなんて軽い言葉は銀八先生には届かず、更に体は密着する



自分のドキンドキンという音が騒がしい



落ち着け、落ち着けって呪文みたいに唱えてるけど、大好きな人に抱き締められて落ち着くわけがない



寧ろパニックが身体を硬直させて、銀八先生に抱き締められているこの状況に興じる他ない



でも頭の中に過るのは "彼女" という存在





いつも銀八先生にこんな惜しむ様ではなく、愛しいという感情で抱き締められているんだろうか




こんなおいしい状況ですら見たことのない彼女に嫉妬する私は醜くどす黒い



醜い私は銀八先生の腕の中にいる資格はないと直感的に思って








「こういうのは彼女さんにするやつだよ?」








教師と生徒の距離に戻す魔法の言葉をかける



先生だけじゃなくて自分にもかけた言葉



この言葉でいつもは元に戻るのに、今日は魔法が効かないようで、ますます腕に力が込められる









八「今はいねぇ」



「え?」



八「二度も言わせんな」








いろんな角度で捉えられる様な言い方をされて困惑が都合の良い解釈を生みそうになるけど、銀八先生の言葉通りに深く考えずに受け取るのがベストだろう



最初で最後、と自分に言い聞かせ先生の背中にぎこちなく腕を回す








八「あー…教師失格だ」



「でも先生らしくて良いと思う」



八「何も良くねぇよ」







長い長い抱擁は定時に設定されたチャイムの音により終わりを迎え、お互いの身体に熱を残したまま離れていく



撮影大会をしていた生徒たちも既にいなくなっていて残っているのは恐らく私くらい



明日からは当たり前だった先生の授業も受けられない









「あーあ、明日から先生に会えないのか…つまんない」



八「もうストーカーされなくて清々するわ」









煙草に火を点けるついでに懐から紙とペンを取り出してサラサラ謎の文字を書き始めた



書き終わると紙を私に差し出し








八「あんましつこかったらブロックするからな」







その紙はたぶん銀八先生と繋がれるID



今は彼女いないってことになってるから調子に乗って良いよね?銀八先生








「素直になれよ」



八「今すぐ燃やしてやろうか」

朝飯→←卒業



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作者名:るう | 作成日時:2022年9月3日 22時

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