五十四輪の花 ページ12
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幸せの道はずっとずっと遠くまで続いているって、思い込んでいた。
破壊されて初めてその幸福が、薄い硝子の上に乗っていたものだと気づく。そして自分たちが救われたように、まだ破壊されていない誰かの幸福を、……強くなって、守りたいと思った。
そう、約束した。
《ーー鬼を倒そう。一体でも多く。三人で》
《ーー私たちと同じ思いを、他の人にはさせない》
力が弱くても。
鬼の頸が斬れなくても。
鬼を一体倒せば何十人、倒すのが上弦だったら、何百人もの人を助けられる。できるできないじゃない。やらなきゃならないことがある。
《ーー怒ってますか?》
そう、私怒ってるんですよ炭治郎君。ずっとずーっと怒ってますよ。
親を殺された。姉を殺された。カナヲ以外の継子も殺された。
あの子たちだって本当なら今も、鬼に身内を殺されていなければ今も、家族と幸せに暮らしてた。
Aにだって、こんな危ないこと、本当は絶対させたくなかった。あの子は優しくて明るくて、皆に愛される子だ。普通に暮らして、愛されて過ごすことだって出来た。
……ほんと頭にくる。ふざけるな馬鹿。
なんで毒効かないのよコイツ。馬鹿野郎。
重力に従い、地面に落ちていく私に向かって、鬼の蔦が伸びてくる。
……抵抗する術は……ない。
ギュル、と蔦が一層伸びる音が、聞こえた気がした。
『姉さぁーーーんッッ!!』
次の瞬間。先ほどまで私に向かって伸びていた蔦は全て綺麗に刀で斬られ、私は妹の腕の中で、妹の顔を見つめていた。
『はぁよかった間に合った……。て、姉さん!あの髪飾りは!?』
「……かみ、かざり……」
『あ゛ーーーーーー!!!!!!あの変態姉さんの羽織と髪飾りまだ持ってる!!!!!こんのクソが!!!それ返せ!!!えっちょっ待っ吸収すんな!!!!!アーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!(汚い高音)』
耳をつんざく、妹の叫び声。
キンキンと耳に刺さるように、その声を痛く感じるはずなのに、どうしてかほっとしてしまった。……なんにせよ、私が時間をかけて練り上げた作戦は……失敗してしまったみたいね。
くす、と笑いがこみ上げてくる。そうしてそのまま、眠気に襲われるようにして、私は意識を完全に手放した。
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れい(プロフ) - めちゃめちゃに笑ったしめちゃめちゃに面白かった…です…永遠に見てたい (2020年9月12日 3時) (レス) id: e48ff50660 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいな(プロフ) - こんなかわいい姉妹がいたら絶対シスコンになってしまう笑おもしろかったです!!!!!!! (2020年9月11日 18時) (レス) id: ec54d11116 (このIDを非表示/違反報告)
みず(プロフ) - 猫丸。さん» 更新がん…がんばる…………… (2020年4月8日 12時) (レス) id: 40c42479fe (このIDを非表示/違反報告)
猫丸。 - 安定の面白さやな、その才能わけろ(?)シリアスとギャグの切り替え上手すぎですか、おいらを弟子にしてくだせえ!!!おーん、更新楽しみにしてるよーん、応援してるよーーん (2020年4月6日 13時) (レス) id: 144e3b7d1c (このIDを非表示/違反報告)
みず(プロフ) - 桜さん» 誤字率に定評がある女がまたやらかしたみたいですねすみません!!!!!しのぶさんは救われましたイエーイ!!!!!!コメントありがとうございます、更新は……気長にお待ちください!!!!! (2020年3月17日 21時) (レス) id: 40c42479fe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みず | 作者ホームページ:https://twpf.jp/oni_kome
作成日時:2020年3月4日 19時