▽残った誇りは ページ11
・
「ふむ、王女の意見は面白い。俺には無い考え方だ」
『知識の浅い、素人目線のものであります故』
「そんなことはない。ヴェネマーレアの王女は教養豊かであると見受けられる」
褒められたのだから本来は喜ぶべきだろうが、恐縮ですわと礼を言う裏で私は僅かに臍を噛んだ。
こんなものは高校でちゃんと授業を聞いていた人間なら理解るレベルだ、女性が教養浅いのがこの世の常識になりつつあるから仕方ないっちゃ仕方ないけど。
そう言えば私、前世ではキャリア思考だったな。
急に湧いた小さい悔しさはそこから来たのかと、今世まで引き継がれた負けず嫌いに心の中で苦笑いした。
「……では、貴殿の母国に関してはどうだ？いくつか文献を読んでいるのだろう？」
『私の母国、でございますか』
いよいよ確認も取らず読んだ物として話をする辺り、ずいぶんと攻めて来てるな。
マフラーさんもオスマン様もピリッとした様子で、部屋全体の温度が下がったのを痛感する。
何を望んでいるのだろうか、何を持ってすれば正解なのかもわからない。
『私は貴国と母国の親和の為に参りました、ここで母国について語る事は我が国王への裏切りと存じます』
どうかご容赦くださいませ。
馬鹿の１つ覚えで頭を下げる、これ以上の答えを思いつかなかったのだ。
ここに来て愛国心が湧いたのは記憶を取り戻す前の生活に依るものだろう。
静かさのあまり返って耳鳴りがするようだ。
これが会社面接だったら絶対不採用だっただろうな。
「……クククッ、ふっはははは！！」
「ちょ、グルッペン……！」
静寂をぶち破ったのは目の前の絶対君主の高笑い。
マフラーさんの慌てた制止も耳に入らないようで、オスマン様は「あちゃー」みたいな顔をしてる。
「本当にお前は良い女だ！とても17になったばかりとは思えない！！」
大正解、前世も足せば恐らく貴方よりずっと歳上だ、口が裂けても言えないけど。
喋る事も思いつかず俯いたまま次の言葉を待つ。
「そんなにヴェネマーレアが大切なのか、王女よ」
『勿論です。国の安寧を保つ事こそが王家の努めと心得ております』
我々国へ引き渡されたあの日、確かにそう思っていたはずだ。
もっとも記憶を取り戻す前の阿呆な小娘の考えではあるけど王族としての誇りは多少あった気がする。
こんな時ばかりハッキリものが言えるなんてな。
この潔さはもっと別の場で発揮させて欲しかった、今だにいつ処刑されるのかなんて怯えてるくせに。
ラッキーゲーム
hoi
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2163人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
