▽初のお仕事 ページ23
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時刻は午後2時20分。初めてのお勤めなので、不測の事態に備えて早めに園を出ることにした。
飲食物を運ぶ為、普段下ろしている髪は一つに結ぶ。
門衛さんに挨拶をして城内へと入り、昨日貰った簡易的な見取り図にある給士室へと向かった。
『失礼します、こちらが給仕室でしょうか？』
戸の前に立っていた同世代らしき男の給仕に声を掛けると、大袈裟な程に目を見開いた。
「A王女様！この度は……」
『わっ、そんな、頭を上げてください…！』
声を上げた彼を筆頭に一斉に頭を下げる給仕達に、思わず此方も頭を下げ返した。
日本人特有のあれである。
『私、恥ずかしながら仕えの経験がありませんの。皆さんに手解き頂けると幸いですわ』
腐っても王女だった訳で、給仕などやった事もなく平身低頭に挨拶をすると幾らか彼らの表情も和らいだ。
大口叩く新人に碌な奴はいない。前世で学んだ事だ。
『総統閣下、お茶をお持ちいたしました』
「入れ」
4度のノックして声をかけると、中から総統の許可が出された。
「失礼します」と言って静かにドアを開く。書類の山を机に拵えた彼はペンを持った手をヒラヒラと振って見せた。
こうして仕事をしている姿を見るのは初めてだ。
「今日の茶菓子はなんだ？」
『本日の紅茶はアッサムティ、茶菓子はブラウニーでございます』
私の言葉に嬉しそうな顔をする総統は、意外にも大の甘党なのだそう。人は見た目によらないな。
食器等を乗せたカートのクロスを外すと中には2人分のセットが用意されていた。
『総統閣下、何方かお客様がいらっしゃるのですか？』
「いや？その予定はないが…」
おかしいな。首を傾げつつ紅茶を用意していると、漸く彼は合点がいったようだった。
「あぁ、もう一つのソレはお前の分だゾ」
『え…？私ですか？』
総統はカートの上の薔薇柄のティーカップを顎で指すと、紅茶を注いでいる私を他所目にどかっとソファに腰を下ろした。
「お前は俺が他所の王女前に1人で茶を啜る奴に見えていたのか？」
『い、いえ！総統閣下にそのような……』
少し前から思ってたけど、やっぱり最初の喋り方は作ってたのか最近は割と口が悪い。
「A」
『はい、なんでしょう？』
「お前そもそも俺の名前は知っているのか？」
『何を……グルッペン ・フューラー様です』
「うん、それで良い」
なんだっていうんだ、満足気に頷く彼の心中などわかるはずもなく。
こうして長い長い一時間が幕を上げた。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
