▽ご令嬢マウント ページ14
・
園の柵の前で別れを告げて、1人建物の中へ戻る。
小さめのホテルの様な作りをしているこの屋敷には、各国の事情により送られた令嬢たちが住んでいる。
「ご機嫌よう、A令嬢」
『ご機嫌よう、スティナータ嬢』
扉を開けた私に、いの一番に声をかけてきたのは隣国領主のご令嬢スティナータ。
爵位の出であるため階級だけ見れば私の方が上になるが、ここに在住して長い彼女は園のリーダー格を持っている。
「またグルッペン総統閣下よりお呼ばれになったと伺いましたわ」
『ええ、まぁ』
「今回もご無事に戻って来られて安心いたしました」
『ふふふ、ただ一言二言お話をする機会を頂戴しただけですわ。心配には及びません』
両者とも笑顔を保ち続けているが、なんとも言えない緊張感がそこにはあった。
彼女の後方にはまるで侍女のように3人の令嬢が佇んでいる。他にもスティナータ嬢を慕う者はいるけれど、この3人は特に顕著でいつもべったりだ。
「まぁ、それは羨ましい限りです。一体どんな会話をなされましたの？」
『えっと、最近読んでいる本について幾つか』
「……あぁ、あの文字ばかりの本ですの」
嘘を言う必要もないので、ありのままに伝えると一間あって令嬢は微かにつまらなそうな顔をした。
確かに今まで挿絵がふんだんに描かれた物語しか読まない者にとって、あの本はつまらないだろう。
「本当に、A令嬢には感服致しますわ。あんなに難しい本をお読みになれるなんて」
『貴女にそう言って頂けるなんて光栄ですわ』
軽くドレスの裾を摘んで礼をし、相手に失礼のない程度の速さでその場を離れた。
以前の私が櫻鏡園内で他者との交流に積極的でなかったのは、多分こういうのが嫌いだったからだ。
独自のマウント合戦。スクールカーストだの、会社の女上司だのが鮮明に思い出されるようだ。辛い。
『かと言って応戦するのは大人気ないし……』
相手は20歳そこらのお嬢さん、一方私は前世と今世を足せば40をとうに過ぎてる。何より自分に女の戦いなど向いてない。
鬱様の寵を受けている彼女が私に良い感情を持っていないことは知っている。
あんまり読んでる本の事気にするから、一度見せた時なんかえらい顔されたもんね。
若い子に着いてけない私は、寝るでもなくベッドに寝転んだ。
色々あった所為で外はもう赤を過ぎて闇へと変わる時間だ。
ぼーっとしてるとガタと天井が鳴る、最近ほぼ毎日だ。鼠の数増えたんかな。
ゴトっと、また音がした。
ラッキーゲーム
hoi
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山西 陽朔 - 考えさせられる小説ですね!次回作は南無妙法蓮華経と唱えることで万人が成仏するということを作品にするのはいかがでしょうか? (2023年4月30日 18時) (
レス) id: aaea05e353 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - ユッケさん» コメントありがとうございます。好きだと言って頂ける事が何より励みになります。続編でも気長にお付き合いくださいませ！ (2019年8月24日 17時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 未人さん» ありがとうございます！続編も気長にお付き合いくださいませ。 (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 黒コマ先生さん» コメントありがとうございます！続編もぼちぼち張り切って参りますので宜しくお願い致します！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
あん肝ポン酢丸(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます！初期からのご愛読恐悦です。続編でもよろしくお願いいたします！ (2019年8月24日 16時) (レス) id: 6a4a4e6549 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あん肝ポン酢丸 | 作成日時：2019年8月4日 8時
