バビロン【天河原】 (ページ2)

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ハリボテの強者ページ2

｢っ、次は俺が勝つ！首を洗ってまってやがれ！｣

ありきたりな捨て台詞を吐いて逃げて行くのはオレの手下が倒した相手

オレはこのバビロン街のトップを若年ながら務めている、
ということになっている喜多だ

そう、つまりオレは見せかけのトップ

ケンカも強くなければ人をまとめるような力もない

何故そんなオレがバビロン街という廃れた町のトップとなってしまったのか
それは全くわからない

生まれた時から用意されていた座なのかもしれない、
元からそうだったのだから

｢喜多さん！｣

部屋に駆け込んできたのは仲の良い天野

｢どうした？天野｣

｢稲葉、稲葉が集団で！誰かのかたきとか言って殴られてて！｣

さっきのやつか

そう呟きドアを強く開け外へと駆けてゆく

ついたのは細く暗い路地
太陽が雲に隠れ、余計に暗さが増す

｢き、た…｣

｢稲葉！大丈夫か？｣

ほおは腫れ、頭や足からは血がどくどくとあふれていた

早く手当てをしないといけない
肩にかけたバッグへ手を入れようとする

｢喜多、だめ｣

稲葉が手を掴む

｢早くここから逃げろ、手当てなんていい｣

｢いいワケないだろ？こんなに血を出して…死んでしまうぞ！｣

｢オレはいいんだ、お前だけでも｣

｢ダメだ！｣

自分でも驚くほど大きな声が出た
キンと耳に響くほど

｢オレには稲葉が必要だ、オレと稲葉と天野…小さいころからの仲間だろ？｣

｢泣くな、喜多｣

瞳から出たしずくが稲葉の顔から流れる血と混じり、稲葉のほおをつたう

稲葉はゆっくり目を閉じた
その顔は微笑んでいるように見えた

ふらふらと
帰るための道を歩く

｢なんで、こんなことに｣

独り言は暗闇に吸い込まれて消えた

ふいに口元を押さえられる
つんとした香りがはなをとおり喉まで届いた

ひどく眠い
もしこの眠気に身を任せれば、稲葉のもとにいけるだろうか

そんなに都合のよいことがあるのだろうか