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「あ、おーい！ブラック！」
後ろから聞こえた声に、僕は眉をひそめて振り返る。そこにいたのはプレーズ・ザビ二で、彼は僕を見た後に愛想よく笑った。どうやら機嫌が悪いようだ。
そこまで仲がいいとは言えないが、3年も同室であれば、感情の変化などわかるものだ。何となくそれが嫌な予感がして、僕は目を逸らして前を向いて走り出す。
「……」
2階の廊下に差し掛かり、僕は諦めて足を止めて彼に振り返った。
「何、ザビ二」
「俺さー、今まで女子に振られたことないのよね」
ニコニコと微笑んだまま、彼は僕の肩をつかんでそのまま覗き込む。グッと爪が腕に食い込んだ。何を言っているんだと、そう思った僕はきっと悪くないだろう。
「今日さ、いいカンジになってた女の子に振られたわけよ」
「え、うん」
「なんていわれたと思う？」
「……じ、純血主義なんてお断りてきなかんじだと」
「「シリウス・ブラック」の息子とは関わりたくないってさ」
僕の言葉を遮って、ザビ二はそれを僕につたえる。僕は思わずもう一度眉をひそめた。ザビ二は続ける。
「僕は君のこと、ぶっちゃけ大嫌いだけどさ。だって君僕よりモテるし、勉強もできるだろ、何気に運動神経もいい」
黙っている僕に、ザビ二は顔面をグッと近づける。僕は彼の顔からサーッと目を逸らした。もしもここにいたのが普通の女の子だとしたら、きっと僕は赤面し何も言えなくなっていることだろう。だけれど、ブラック特有の美しさを持つという自負を持っている僕には、そんなものは全く効かなかった。
だけれどやはり、美形の怒気とは恐ろしい。
「そんな君だからこそ、僕は、君の根も葉もない噂がたって、勝手に評価が下がっていくのが許せないんだ」
真剣なザビ二の顔に、もやもやとしたものが胸に広がる。僕は、彼の思っているような、優秀な人間ではないのだ。
「君には全く眼中にないんだろうけど、君は僕のライバルだ、A・ブラック。違うなら噂を否定しろ。あっているのならあっていると公表しろ。君のやっていることは卑怯そのものだぞ。君にはその気はないのかもしれないけど、僕がもしも君を知らなければ、逃げ回って自分の意見を言うことできない愚かな奴としか思わえないからな。この学校にいるほとんど、「君」のことを知らないんだ」
ザビ二のその真剣な目を見て、僕はモヤモヤを隠して呟く。
「何気に運動もできるじゃなくて、とっても運動できるじゃない？」
「……は？黙れよ」
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作者名：あんころころもち x他1人 | 作者ホームページ：
作成日時：2019年5月13日 9時
