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「君なにがわかる?」
初めて見た、表情だった。いつも彼はなににも興味がないように、無表情で、感情をあらわにするときなんて、ほとんどない。だけれど今の彼は、確かに、怒っていた。
「なにがわかる?家族を失う悲しみ?はっ、そんなもの、いやと言うほど味わった。唯一の肉親だって?なんで血が繋がっていたら、仲良しこよししないといけないんだ。僕はあいつのことを、愛したことも、愛してもらったこともない」
そこで彼は言葉を切る。そして、また、まっすぐとこちらを見つめながら言った。
「いいじゃないか、君は親がいない分、愛情を貰っていないぶん、もう、それ以上絶望することも、それ以上悲しむことも、それ以上期待することもない!」
「君に、僕の気持ちがわかる?わからないだろ!だって君には両親がいないから!自分が一番不幸のように言うな、A・ブラック!両親がいても、愛されず、愛せず、苦しんでいるやつだってゴロゴロいるんだ、両親がいないって言うだけで、それが最大の不幸だと思うな!」
そして彼はバタバタと音を立てながら、寮に引っ込んで行った。僕はストンとソファーに座り込む。
「A」
まさか、だれかに見られているだなんて思いもせずに、僕はビクッと肩に力を入れる。「だれか」はため息をこぼした。
「初めからいた。びっくりしたわ。あなたたちが急に喧嘩を始めるんだもの」
「ごめん」
少し拗ねたように頬を膨らませるダフネ。だけれどそのすぐ後に、悲しそうな顔をした。
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作者名:あんころころもち x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年5月13日 9時