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「でも先生、Aはなにもわかってないんだ！」
「それは仕方ないことなのじゃ、ハリー。二人にはあまりにも時間がなかったのじゃから」
「っ、だから！」
「じゃあ、僕が相続します。先生。シリウスの遺産は」
いらいらとした勢いのまま、ポッターは言った。なんとなく癪に障ったけれど、まあそれならと身を引く。彼はつづけた。
「それであの屋敷をどんな手を使ってでも壊します。それはもう、見る影のないような」
「は？あの屋敷には歴史的価値がどれくらいあるのかわかってるの？8世紀以上も続く旧家だぞ？」
「そんなこと、僕にとってはどうだっていい話だ。僕にとったらあんな家、ただつまらない家に過ぎない」
「……なら僕が相続した方がずっとましだ！」
言った後に、ポッターの口角が馬鹿にしたように上がるのが見えた。そして先生と目を合わせる。どうやら僕は、彼に乗せられたようだ。というか、自分の単純さが嫌になる。
「……君のこと、やっぱり嫌いだ」
「安心していいよ。僕もそんなに好きじゃないから」
深いため息をこぼした。
確かに、ポッターの言うことが正しい。あんな古い家を残させて、メンテナンスだけさせるだなんてずいぶん都合のいい話じゃないか。ポッターが壊してしまいたいと思うのは権利なのだから、それを僕がどうこう言って、止めさせるのはおかしいじゃないか。
「じゃあ、やっぱり僕、あの家を相続します。こうなったら前言撤回です。もらえるものは全部貰ってやる。君に遠慮なんてしない。それにもともとは、あの財産は僕のおばあさまのものじゃないか」
そう言えば、ポッターはむかつくことに僕を単純だとばかりに見つめた。実際認めざるを得ないのだけれど、その視線は少し腹が立った。
「そういうことなら話が早いのう。実は先ほど話した相続の権利には続きがあっての。A・ブラックが遺産の受け取りを拒否した場合、ハリーに壌土されるというものなのじゃ。ハリーはいらぬと言うし、Aは全額貰うと言った」
なんだか、初めから全て先生に諮られていたような気がするけれど、もう諦めて僕は小さくため息をこぼした。
こんな勢いで決めていいことかはわからないけれど、あの家の所有者になったということは、僕はブラック家当主になったということだ。もう、ロジエール邸に戻る必要もないということ。それは少しだけ、うれしかった。
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2021年9月20日 0時
