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「お、おはようございます」
ノット家の一番いい椅子で、朗らかに微笑むダンブルドア先生に、僕は小さな声で言った。なんでいるのという質問は飲み込んで、セオドールに言われるがままに椅子に腰かけた。
「おはよう、A」
「……」
「どうしてわしがここにいるのか、それが気になっておるのじゃろう」
「まあ、はい。そうです」
セオドールが手際よく朝ごはんを食卓に置いて行く。おいしそうなハムエッグである。
「じゃあ僕、庭に出ているので。用があれば呼んでください」
そう言い、そそくさとリビングから出て行くセオドール。僕は小さくなって、ダンブルドア先生を見つめた。何を言われるのか、早く終わってほしい。
「今日は、君にとって少しばかり嫌な話をしに来たのじゃ」
「いやな話、ですか？」
「そうとも。死んだ君の父上、シリウス・ブラックについてじゃ」
そこで初めて、僕はダンブルドア先生の顔を見つめた。真剣になったからか、さっきまで鮮明に聞こえていた時計の音や、鳥のさえずりが遠くなる。
「君の御父上の遺産の話をしに来たのじゃよ」
なるほど、たしかにそれは僕でなければいけない話だろう。というのも、きっとこの人は、ロジエール夫妻をあまり信用していないように思えたからだ。
しかし、僕はその財産を、受け取る気はあまりないのだ。
「僕はいりませんよ。あの人と僕は確かに血がつながっているのだろうけれど、だとしても、親子らしいことなんて何一つもしていない」
「しかしそれを、シリウスは望んでおった」
僕は何も言わなかった。
確かにそれはそうだろう。あの人は僕がどれだけ拒んでも、近づくことを辞めなかったのだから。きっとあの人は、僕のことを愛していたのだ。それは彼が死ぬまで僕に伝わることはなかったけれど。
「……」
「ハリーを交えて話し合いがしたくてのう。フクロウで呼び出すだけでは、君は来てくれんじゃろう。じゃから、こうしてここまでやってきたのじゃ」
まあ、正直な話、呼ばれても行く気にはなれなかっただろう。
ポッターたちとは会いたくないし、会ったとしても話すことなどない。ブラック家の遺産がなくなったとしても、いい理由で有名になった僕は、きっと将来困るようなこともないだろう。
「行ってくれるかい？A」
「……わかりました」
僕は渋々頷いて、目の前にあるトーストに手を伸ばした。
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2021年9月20日 0時
