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「僕はさ、君じゃないし、君にはなれない」
「……」
「でも、目の前で身内を失った気持ちはわかる。今年の夏は僕の家においでよ。もう、あの人もいない」
あの人、というのは、セオドールの父親のことである。あの日死喰い人としてあの場所にいたノット氏は、ルシウスさんと一緒にアズカバンに投獄されている。
しかしそれについて、セオドールは全く気にしていないようだったけれど。
「今、ザビニが下でほかの奴らと話してる。しばらくはここには来ないよ。君が何を考えているのか、教えてくれないか」
「……」
「いやかもしれないけど、僕は君の力になりたいと、本気で思ってる」
ちらりとセオドールを見た。
ああ僕らは、もうずっと前から親友なのだ。本当の、本物の。そう考えるとなんだか口が勝手に動いた。
「たぶん僕は、怒ってるんだ」
言葉が溢れ出る。あの人が死んで初めて、視界が潤んだ。
「たぶん。わからないけど、他にこの感情に、名前を付けられない。
僕は、僕に期待をかけるルシウスさんに、僕の気持ちを考えてくれないあの人に、なにも決断すらできない僕自身に、怒ってるんだ。たぶん」
「でも、その怒りをぶつけるべき場所がわからない。僕が、僕なんかが怒りを抱いていいのかすらわからない。
あの時何もできなくて、ただうずくまっていた僕に、誰かを責める資格なんて、あるはずがない」
わかっている。わかっているけれど、抱かずにはいられないのだ。誰かを責めずには、いられないのだ。
「怒りを発散したけど、その怒りを、誰にぶつければいいのかわからない。
ポッターたちは違う。彼らはただ、僕に気を使ってくれただけだ。どうしようもない僕の選択に、付き合ってくれただけだ」
「ベラトリックス・レストレンジかもしれない。
でも、僕は彼らを、恨んだり憎んだりしてはいけない。絶対。何があっても。彼らのやってることを、疑ってはいけないんだ。
きっといずれ、あの人たちの主人が，僕のご主人様になるんだ」
涙が零れ落ちた。それを拭う。セオドールが僕の肩をさすった。それがまた、苦しいのだ。
「僕自身に向ける怒りは、この数日ずっとぶつけてきた。でも、そうすれば、そうするほど、つらくなる。
何もかもが、呼吸をするのでさえ、しんどくて、つらくて、たまらない。
何もできない僕を直視し、考えるのが、つらくて、苦しくて、……どうすればいいのかわからないんだ」
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2021年9月20日 0時
