今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:5,355 hit
小｜中｜大
ページ ページ43
「フラン。私もね、あなたと離れて本当に寂しいわ。とっても離れ難い」
お姉さまは私の頭を撫でて、抱き寄せた。優しい姉の、優しい匂いに、やっぱりまた涙が溢れる。
「でも、行かなければならないの。ごめんね」
額にキスを落として、姉は笑った。いつもの、優しい、優しい、笑み。わたしの大好きな笑み。
その笑みに、何も言えなくなって、わたしはおし黙る。
「大好きよ」
いじわるだ。
その一言で、なんにも言えなくなる。お姉さまもそれをわかっているから、同じように黙った。
その表情に、わたしは泣きそうになる。だって、わがままを言っているのがわかってるから。
「いってらっしゃいませ、お姉様」
だから、そんなふうに言った。自分の気持ちを飲み込む。
だいすき。おねえさま。だから、置いていかないで。
「いってくるわね」
優しい笑顔にまた涙が溢れる。お姉さまはそれを優しく拭って、立ち上がった。
「それじゃあ。失礼しますわ。お見送りありがとう」
「いいえ。私たちも、あなたと少しでも長くいたかったから」
お母様はわたしの頭を撫でて、笑う。私は下を向いて、なにも言わなかった。
お姉様はそのまま、なにも言わずに立ち去る。視線を上げた時には、すでに視界にお姉様はいなかった。
「それでは、帰りましょう」
お母様にそう言われ、私は手を引かれながら帰路を辿った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 18人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2020年8月7日 0時
