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「さっきはありがとう、ミス・プルウェット」
「は？」
なんで知っているの？
とそう聞く前に、彼女はごめんなさいと私に謝った。別に怒っているわけではないのだけれど、勘違いをさせてしまったのだろうか。
前から姉や兄には、お前は目つきと態度が悪いと言われ続けていたのだ。
「違ったかしら。プルウェットの子は黒髪か赤毛の髪にアンバーの瞳だって聞いてたから。それにお嬢さんは、私と同い年だって……」
「合ってる。そんなの覚えてるだなんて、すごいね。私はメアリアっていうの」
「可愛い名前ね」
「そんなことないわ。みんな、合ってないって言うもの」
「いいえ、ぴったりよ。あなたってすっごく可愛いもの」
「なっ、かわいくなんてないわ。兄さんも姉さんも、私のこと可愛くない子っていうし」
今まで言われたことのない言葉で褒められて、私は思わずそっけない態度をとる。ちょっと失礼だっただろうか。
「そんなことないわ。ああ、そうだ、私は、」
そういうと、彼女は一層ニコニコと笑って、胸に手を当てて軽く頭を下げる。やはり天使か何かの化身ではないだろうか。その所作一つ一つに品というものがあって美しい。
「私はマリア。マリア・アンジェラ・ナタリー・メルタ・オーレリア・シャフィク」
「長い」
「もっと長いのよ。私、今まで一度も自分よりも長い名前の方に出会ったことがないもの」
そしてまた微笑むと、私の手を握って、近くのコンパートメントの扉を開ける。
「ちょうどいいわ。あなたとおしゃべりしていたら、空いたコンパートメントが見つかったの。一緒にどう？」
「……私でよければ」
そう言って、彼女の手に引かれるままに、私はコンパートメントに入って行った。
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2020年8月7日 0時
