45th【13年前】 ページ45
「……」
母は日刊預言者新聞を読んで、涙を流しました。なぜ、このようなことになったのでしょう。どうして、こののような思いをしなければならないのでしょう。
母は彼女の上の息子を恨みました。彼女の弟を恨みました。もしもあの子が家を出ていかなければ、もしも弟がお金を息子に渡さなければ、彼は今、ブラックを率いて歩く王となったでしょう。
そうすればきっと下の息子はいなくならなかったし、夫ももっと生きることができたのです。もしも彼が王となれば、もう少し娘を、自由に過ごさせてあげることができたでしょう。
「ああ、なんでなのよ！」
魔力が爆発し、部屋中のものが浮き上がって壁にぶつかります。
全て彼のせいでした。
もしも出ていかなければ、下の息子が死喰い人になる必要などなかったのです。夫が責められることも。全て、なかったのです。
それだというのに、彼は言うでしょう。
「あの家の連中は、みんな根性が腐っている」と。
悲しくて悲しくて、辛くて辛くてなりません。
「許せないわ。あの血を裏切る者。わたくしたちを、家族を、裏切る者。二度と帰ってくるな、絶対に、許すものか。何があっても、」
ブツブツと、呟きます。新聞の中では「シリウス・ブラック」がこちらに向かって吠えていました。母はそれをクシャクシャにして、投げ捨てます。
なんて愚かな記事でしょう。あの子が、こちらに戻ってきてくれるのならば、どれほど楽だったのでしょう。だけれど息子は、あくまでブラックで、そして、あくまで自分の息子なのです。
そんな彼が、一度決めたことを破るなど、あり得るはずがないのです。
「殺してやる。あの腐った根性。死んでしまえ。許さない、血を裏切る者、穢れた血、汚い人狼。絶対に、絶対に、許すものか」
そんな言葉を母は、死んだ後もつぶやき続けるのでありました。
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作者名：あんころころもち | 作者ホームページ：
作成日時：2020年4月22日 14時
