【ハリポタ】ハリーポッターと最後の星【黒家族】 (ページ44)

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44th【16年前】ページ44

「どうしてなの！」

母の声は、屋敷に響きました。その後に壁になにかを投げつける音がします。下の息子の音信が消えてから、半年が経ちました。母は不安定になりました。いつもぼーっとしているのに、意識が戻ると何かに当たるのです。

なぜ、こんなことになったのでしょうか。なぜ、守ってあげることができなかったのでしょうか。なぜ、なぜ、なぜ。何もかも、もはやわからぬことでした。

「……」

父は小さく息を吸います。だけれど、いくら辛くあったとしてもそこで立ち止まっているわけにはいかないのも、また事実なのです。

父は杖を持ちました。そして書庫に向かいます。そして何日か後には、ありったけの保護魔法を、家にかけるのでした。

「君にはきっと通じていないだろうけど、私は君を愛しているよ」

「君には色々任せすぎてしまっただろうけれど、私は君に生きて欲しかった」

「君には全てを我慢させてしまったけれど、私は守りたいだけだったんだ」

「私はきっと最後まで、君を守ることはできなかったんだろうね」

父は魔法をかけるたびに、そんなことを考えました。血を守ることに固執をして、きっと恨みを買っているだろうと、そう思っているのでした。そしてそれは、揺るぎない事実なのです。

そのせいで、愛する息子は家を出たのです。
愛する息子は何も言わずに消えたのです。
愛する妻は心を病んでしまったのです。

「守れなくて、すまなかった」

それはきっと、誰にも届かぬ思いだったのでしょう。
でも、だからどうか、あの子だけは、守らなければならないのです。

ーーーー

クリーチャーは涙を流しました。その日は雨が降っていて、それだというのに人はたくさん集まりました。皆、悲しげに涙を流し、同じ方向を向いているのです。

「ああオリオン。あなたまでわたくしを置いていくんだわ」

母は涙を流します。止められるはずがありません。悲しくて、悲しくて、たまらないのだから。

1979年、最愛の息子が消えたその年に、オリオン・ブラックは一生を閉じたのでした。