【ハリポタ】ハリーポッターと最後の星【黒家族】 (ページ26)

今日:5 hit、昨日:2 hit、合計:92,379 hit

26th【9年前】ページ26

女の子はその日、ベッドから出ませんでした。クリーチャーはそれを見つめて、悲しげにため息をこぼします。女の子は最近朝から晩まで泣いて、そして何もせずに眠りつくようになりました。

食事も無理やり食べさせなければ食べることもなく、どんどん痩せこけていきます。クリーチャーは心配で心配でなりません。だけれど、泣いている女の子に、彼は何をいう権利もありません。

クリーチャーは知っていました。女の子を傷つけているのは自分なのです。もしも彼女に真実を告げていれば、女の子はこんなことにはならなかったかもしれない。告げていればよかったのです。

シリウス様は勘当を受けアズカバンに収監され、坊ちゃんは行方不明に、ご主人様は病魔に襲われ亡くなり、奥様は心を病まれ最後には衰弱し亡くなってしまったと。

だけれど、クリーチャーは告げなかったのです。穢れを知らせてはならないと、そう言いつけられていたから。そしてそれを聞いて、彼は自分の意思で、そう判断したのです。お嬢様にはそのことを知らせないのがいいのだ、と。

しかし、そのせいで女の子は気をおかしくしてしまいました。一日中ずっと泣き続け、風呂にも入らず、飯もとらず。

だけれど今さら言ったところで、もっと傷つけるのは明らかでありました。今さら家族は亡くなったのですと言ったとしたら、彼女はどう思うでしょうか。

開ききった傷を、さらに開けることになりましょう。

そんなむごいことを、クリーチャーにはできぬのです。出来るはずがないのです。

だけれどクリーチャーは女の子に言い続けます。

「お嬢様、どうか泣かないでくださいませ。きっといつか、訪れてくださいますから」

クリーチャーもまた、愚かであったのです。