第27話 彼女の思惑 ページ11
時は、少しだけ前に遡る。
.
コトン。
静かな部屋に音が響く。
まだ湯気の立つカップを机に置くと、緑色の髪が静かに揺れた。
「………。」
「ｷﾙ？」
「あぁ、ごめん。何でもないよ」
横に並ぶキルリアがどこか心配そうな表情をしながらその顔色を窺っている。
それにハッとすると、シトリアはふっと表情を緩めキルリアへと優しく笑いかけてその頭を撫でた。
「………。」
一瞬向けられた視線も、すぐさま目の前のモニターへと戻り……その表情はまた険しくなる。
視線の先に映されるのは、ライジングボルテッカーズの面々。
そして奇襲をかけるエクスプローラーズ。
そう、先の古城での戦闘だった。
なぜそんな映像を持っているのか。
その理由は定かではないが、シトリアはじっとその映像に見入っていた。
「ライジングボルテッカーズにエクスプローラーズ、そして……ペンダントだったポケモン」
パッと映像が切り替わり、ペンダントだったポケモン……テラパゴスが映る。
これまで見たことのないそのポケモンを見据えながら、シトリアはひとつ息を吐いた。
……すると、着信を告げながら深い青をしたスマホロトムがシトリアの前へと飛び出す。
こんな時に何の用だと視線を送ると、画面に表示されていた相手を見るなり面倒臭いとでも言いたげに顔が顰められた。
「出る気ないから、切っておいて」
ふいと顔を背け、拒否を示す。
するとすぐに着信音は鳴り止んだ。
ここ最近、こんなことばかりだ。
事あるごとに電話をかけてきて、暇なのかと疑いたくなる。
……生憎こちらは暇ではないのだ。
「まぁ、これだけ動きがあれば焦りもする…か」
そう納得しつつも、だからと言って何度も連絡してくるのはやめてほしいとは思う。
シトリアはまたひとつ息を吐くと、モニターの電源を切って椅子からゆっくり立ち上がった。
「そろそろ、次の手に出るべきかもね」
黒縁の丸眼鏡に手をかけ、机に置く。
するとその先に、いつもは眼鏡に遮られて見えなかった琥珀色の瞳がゆらりと揺れて見えた。
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作者名：セレーナ・ラフィーネ
| 作成日時：2024年4月6日 19時
