【意味不明なオリジナル小説短編集】 (ページ1)

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見えない世界／見える世界ページ1

人間が見えない少女がいた。
　失明しているわけではない。
　植物や建築物、動物．．．ゴミに至るまで人並みに見ることができるが、「人間」という生物のみが見えない。
　声は聞こえるし触れることもできる。何処に居るかも大体わかるので、生活に支障はほぼないが彼女の目は決して人の姿を映すことはない。
　優しい父と母の顔。背の高い兄。喜怒哀楽の表情も何一つ。
　両親に連れられた病院で言われた言葉は、
「精神的なものでしょう」
　その一言。
　成長するにつれ少女は「見えない」ということが異常だと感じはじめる。それはストレスとなりやがて彼女の心を重い鎖が締め付けた。
　
　結果少女は人とは別のものに依存した。病んでいるとしか言い様がない程に。
　それは限りなく人に近い形をしており、話すことも動くこともできる。それは彼女の追い求めた世界の頂点だった。

　ただ一つ『人間ではない』という点を除いては。

　即ち「妖異」「霊」「異形」の類。
　「人ならざる者を見る力」。それが少女に与えられた、世界を見るための「視力」だった。
　生きていくのに迷惑極まりない力。しかし、少女にはそれしかなかった。
　肌の色、目の色、髪の色を教えてくれた世界。少女だけの世界。『妖異』の巣食う世界。
　彼女は今そこへ足を突っ込み、沼にはまるかのようにその世界へ。その世界の奥底にまで．．．
　沈んでいく
　沈んでいく
　沈んでいく
　沈んでいく
　沈んでいく
　沈んでいった
　沈んで．．．
　沈んで．．．
　いった．．．
　沈んで．．．
　沈む．．．
　む．．．．．
　沈んだ・・・・・・
　だ・・・・・

　それから．．．そんな少女に何があったか。

　それを知るのは傷を負い尚笑っている少女のみである。

．．．終わり．．．