親愛なる君へ 6 ページ6
その夜、時計の針が天辺を指し示す頃、ようやく帰宅することができた。
荷物をドサリと置いた瞬間、あまりの疲れから俺はソファに全体重を預ける。
やっと帰って来られた。
だが、こうして気が緩んだ瞬間に、嫌でも彼女の顔が浮かぶのだ。
そしてすぐに、楽しかった彼女との思い出が走馬灯のように脳内を駆け巡る。
ここで俺はハッと息を呑んだ。
無意識に今までの記憶を、もう終わった思い出として扱い、自分が彼女との別れを受け入れたのだと気づかされた。
まだ俺は何一つ気持ちの整理がついていないはずなのに、自分の脳がこんなにも早くすべてを忘れさせようとしてくることにひどく絶望する。
別れてもなお彼女を想い続けることは許されないのだろうか。
そんな自分の女々しさを思い知らされ、俺はさらに絶望の色を濃くしていった。
だが、ふとそこで俺は負の感情のメーターが逆に振り切っていくのをわずかに感じ取った。
今まで俺は彼女に振られたことを思い悩んでばかりで、彼女自身に一度でも自分の本音をぶつけたことがあっただろうか。
くだらない自分の自尊心を守ることばかり考えて、俺は一切それをしなかった。
別れたくないと、プライドや外聞を捨て去って。
それをしてもいないのに、なぜここでクヨクヨと燻るだけで何かが変わると思っていられたのか。
突如湧き出てきた謎の感情によって、身体を動かされた。
勢い良く立ち上がった俺は、先程まで羽織っていたコートに急いで袖を通し、再び外へと駆け出して行った。
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Annie(プロフ) - 朔さん» 朔さんコメントありがとうございます！更新はゆっくりですが頑張りたいと思います(^^) (2021年5月14日 19時) (
レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
朔 - 面白いです！！更新頑張ってください (2021年4月28日 20時) (レス) id: 06e8a73e80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Annie
| 作者ホームページ：https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時：2021年2月15日 18時
