匂わせちゃう系男子。5 ページ5
ふと目を覚ますと、目の前には彼のあどけない寝顔があった。
いつも忙しくて、テレビでも動画でもたくさん喋って、オフィス内でも的確な指示をテキパキと出して。
そんな彼の、こんな風に休息を取る様子を見られるのは貴重なんだろうなぁと思いながら、ふっと微笑みを漏らす。
少し長めの前髪がさらりと彼の額から落ちてきて、それがなぜか妙に色気を含んでいて。
思わず胸をドキリとさせながら、私はその前髪に手を伸ばした。
好きな人の寝顔は、いつまでも見ていられる気がする。
これは決して過剰な表現ではなく、このまま見つめていたらきっとあっという間に1日が終わってしまうことだろう。
それが許されるのであれば是非そうさせてほしかったが、今日も彼にはお仕事があるし、私もオフィスに行かなければならない。
先程の淡い夢を諦めながら、彼を起こさないようにベッドから抜け出して身支度を整えることができるだろうかと思案する。
だが、先日泊まらせてもらった時にそうしたことがあって。
その時は運良く彼を起こさずにベッドを抜けて、着替えをしたり化粧をしたりしていたのだが。
程なくして目を覚ました彼が血相を変えて私のところへとすっ飛んで来て、「夜一緒に寝て朝ベッドから彼女が消えてるなんて悲しすぎる!起きる時まで一緒にいて!」なんて言われてしまったものだから、勝手に起きることもできない。
壁にかかった時計を見上げると、すでにもうそろそろ起きても良いのではという時間だった。
今日の彼の予定として、お昼頃から今度のテレビ収録の際の打ち合わせがあることは聞いていた。
その時間にはまだまだ余裕があるが、彼は朝にすこぶる弱い。
目を覚ましたところで、すぐに動かずにボーッとしてしまうことだろう。
心を鬼にして、私は未だスヤスヤと寝息を立てる彼の頬をさらりと撫でた。
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作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年9月16日 20時