0.02mmの片想い。 ページ1
「身支度済んだら、早く帰ってね」
目の前には、つい先程までベッドの中で激しく愛し合っていた相手。
まさかものの数分で、ここまで愛が覚めてしまうなんて。
視界が真っ暗になるほどの絶望感を味わいながらも、惚れた弱みから私は大人しく彼に従うことしかできなかった。
ホックを留め、服を着て。
乱れた髪を指先でササッと直し、すっかり彼に奪い取られてしまった口紅を塗り直す。
私達は、所謂そういうフレンド。
いつからこんな関係を始めたかなんて覚えてもいない。
ただ、私はもうずっと前から拓哉が好きで。
なぜだかどうしても彼じゃなくちゃ駄目で。
長い長い片想いをし続けて、いつか彼女になってやるって思いながら彼の側に居座り続けていた。
なのに、なんでこうなってしまったんだろう。
こんな関係になってしまったら、一生彼女になんて昇格できるはずもないのに。
事の発端は、数年前。
私も彼もクイ研で一緒に活動していて、ある日飲み会があった。
チャンスだと言わんばかりに彼の隣を陣取った私。
だが、あまりにこちらに関心を向けてくれない彼にひどく傷つき、私はベロベロになるまで酔っ払ってしまった。
後のことはもう、記憶にない。
気づいたら私は彼の部屋で素っ裸で寝ていた。
しかも、上裸の状態で寝ている彼の隣で。
二日酔いからズキズキと痛む頭を必死に働かせ、昨夜の記憶を辿ろうとしたが何一つ思い出せない。
慌てて彼を起こして何があったのかを尋ねたが、
「覚えてないなら思い出さない方がいいと思うけど」
という一言と、いつもより冷たい彼の態度に、私は自分がしでかしたことの重大さを思い知らされた。
きっと私は酔っ払った勢いで彼に迫ってしまったのだ。
そして、私の気持ちに応えられない彼は、せめてと一晩を共にしてくれた。
最悪だ。
なんでこんなことに。
私はもう一生飲酒しないことを心に決め、彼に謝り倒した。
「気にしないでいいよ」と、彼はけろりと言ってのけた。
それが私には、物凄く残酷すぎる言葉だとも知らずに。
結局彼は私のものにはならない。
それが決定づけられた瞬間だった。
彼に抱かれるなら、せめて一生の思い出になるように一瞬一瞬を記憶に刻みつけたかったのに、残念ながら欠片ほども私の脳内には残っていなかった。
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Annie(プロフ) - 217さん» わー！217さんお久しぶりです、コメントありがとうございます！！騙されていただけて良かったです(？)きっと彼と幸せになるには、物凄い遠回りで長い道のりを行かなければならないんだろうなと、色々考えながら書きました。そう言っていただけて嬉しいです(; ;) (2020年9月14日 8時) (
レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
217(プロフ) - Annieさんこんばんは。登録者記念の時に、彼のお話について仰っていたのを思い出し驚きましたが、とても楽しませてもらいました…！主人公視点だったので、最後まで騙されていました笑 Annieさんの書くk.wm/rさん最高でした。ありがとうございました（ ; ; ） (2020年9月13日 18時) (レス) id: 45bc699ba3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Annie
| 作者ホームページ：https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時：2020年9月13日 13時
