笑わない君に、恋をして。6 ページ6
その後、少し早めに川上さんは伊沢さんから編集長の仕事の引き継ぎをされていた。
現編集長は、合間を見て先程の彼の発表を引用リツイートし、「卒業おめでとう」とツイート。
私もこっそりいいねボタンを押した。
皆が次々に帰宅する中、私は先日撮影した動画の編集をしながら彼らの仕事が終わるのを待っていた。
彼らの仕事が終えられた後に、特に何かしようと決めていたわけでもなかったのだが、私は2人のことを黙って見守っていたのだった。
日付が変わる30分前、伊沢さんが帰り支度をし始めた。
川上さんはもう少し残って仕事を覚えると申し出る。
「Aちゃんは?こんな時間だし、送っていこうか?」
CEOが気さくに声をかけてくださった。
だが、川上さんを置いてこのまま帰る気にもなれなくて。
どうやって断ろうかと考えを巡らせていると、
「彼女は僕が送ります」
と川上さんが強めの口調できっぱりと言い放った。
まさか彼に送ってもらえるとは微塵も思っていなかった私は呆然。
それを受け伊沢さんは小さく笑うと「あんまり遅くなるなよ」と川上さんに言い残し、オフィスを後にする。
バタンと玄関のドアが閉まる音がした後、部屋の中は静寂に包まれた。
川上さんと、2人きり。
2ヶ月前にも同じ状況があったが、あの時はまだ明るい時間帯だった。
今はもう日付をまたごうとしていて、何やら妙な緊張感を抱いた私はゴクリと生唾を飲み込む。
ところが、2人きりと言ってもその後特に何かが起きることもなく、数十分後仕事の区切りがついたらしい彼に「帰ろうか」と声をかけられた。
思わず拍子抜けをしながら、私も彼に続いて慌てて帰り支度をする。
「忘れ物ない?」
『はい』
いつの間にか日付が変わっていて、私達は終電の時間を気にしながらオフィスを後にした。
185人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Annie(プロフ) - 217さん» ありがとうございます!共感していただけて大変恐縮です…!お話も楽しんでいただけて本当に嬉しく思います。これからも少しでも楽しんでいただけるよう頑張りますので、よろしくお願いします! (2020年5月13日 12時) (レス) id: 8c53967ba8 (このIDを非表示/違反報告)
217(プロフ) - いつもお話を拝読している者です。いつも楽しく読ませてもらっています…!今回のお話があまりにも自分の気持ちを代弁してくれていたので我慢できずにコメントを書いてます。どのお話もだいすきです。これからも応援しています…! (2020年5月13日 0時) (レス) id: cc2f607952 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Annie | 作者ホームページ:https://twitter.com/kmu_annie?s=09
作成日時:2020年5月12日 12時