【あんスタ】兄嫌いと兄者嫌い【男主】

Episode７＋深呼吸は大事＋ ページ8

・







少年を取り巻くオーラが変わったのは言うまでもないだろう。何だその物言いは…と即座に口を開こうとも、そのような言葉が少年の口から飛びだすことはなかった

すぅーはぁーと、息を大きく吸い、吐き出した
苛立つ自身を抑え、心と頭を落ち着かせた


『いやぁ〜、それよく言われるんだよね〜！UNDEAD所属には見えないって。でも、僕は正真正銘UNDEAD所属だよ？』

悪気はなかったとはいえ、失礼なことを問うた女は、癇に障ったのではないか、怒られるのでは……と覚悟したというのに
何ということだろう。少年は怒りすら見せなかった。むしろ、困ったような人懐っこい笑みを浮かべて、手を頭の後ろに組み始めた

口笛をも吹きそうなその態度に女は胸をなでおろした
……が、それは一瞬のことだった。おちゃらけた風に見せかけた少年はその女に対して疑念を抱いた


『今のうちなら大ごとにはしないからさ。普通科とか、他の生徒さんなら、早くそっちの校舎に戻った方がいいよ』

え……？と脊髄反射で間抜けな声を出した女に、他の言葉を紡がせる余裕を与えず、少年はたたみかける


『だって君……本当にプロデューサーなら、アイドルのこと全く知らないわけないよね？
僕等のライブ映像だって、ここに来る前に頼めば見せてもらえただろうし……？ねえ、』


口許は緩んでいるものの、目が笑っていないとはまさにこのこと
可愛い顔して裏には毒が……というほどではないけれど、女には少年の圧が重々しくのしかかった



「おはようA。
そんなところでどうかしたのか？」


女と少年、緊迫した空気の中。
女にとっては救い、そして少年にとっては横やり、のような声が二人を包み込んだ
柔らかくたいていの男性よりは低めの声の主からは女のことは見えておらず、ただただ少年がなぜか廊下に佇んでいるようにしか見えなかったのだ


くるりと振り返った少年は、怖気づいてしまうほどの怖〜い雰囲気を引っ込め、完全に別人格のように変身した。ここまでの切り替えの早さは誰もが拍手をしてしまうほどだった



『おはよう！アドくんっ！』

いきなり飛びついた少年を青年はよろけることなく受け止めた
そしてそのまま、手を少年の頭へやり、撫でた。まさに犬のような懐きっぷりである
女は茫然としてその少年を見つめていた







・

Episode８＋ファンだというけど＋→←Episode６＋何それ…なんか文句でもある？＋

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す