Episode40+ヒーローの話+ ページ41
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「……そうですか、なっちゃんが」
促されたまま、適当に顛末を説明する少年に、顔を半分、水中に浸したまま青年は相槌をうつ。
『はい、なので僕が不安に思う必要はないとは思うんですけどね……』
「ううん、ぼくが〔くち〕を はさむことでもないとはおもいますけど〜……ひとつ、ぼくからなまえに〔ちゅうこく?〕をしましょう〜」
『忠告、ですか…?』
「〔ちゅうこく〕というより、〔あどばいす〕にちかいかもしれません〜」
ずぶ濡れの体を気にすることもなく噴水の縁に腰を掛けて、水が滴る前髪を徐にかきあげた奏汰は、一度空を見上げて、それからAの顔を見つめ、最後に水面に映る自身の顔を覗き込む。
そうしてそのままの体制で、Aに向けて優しい声色を届ける。
「〔ふあん〕におもうことはけっして〔わるいこと〕ではありません。なまえが〔ふあん〕におもうのなら、それはきっと…なまえがまよっているからです。……〔ほんとうに?〕と、なやみだすときりがありません」
「とくに、なまえはよく〔かんがえるこ〕ですから。ひとりでかかえて、そうだときめたのなら、きっといまのなまえにとってのみちはあったっているはず。……もし、とちゅうであやまりにきがついて、もどろうとおもったとき、きっと〔れい〕もなまえのおなかまさんもまっていてくれますよ〜」
「それに、その〔ふあんなおもい〕は、〔さいりょう〕の〔けつだん〕をくだすときにかならずなまえをよいほうこうへとみちびくためのかぎとなってくれるはずです。
だから――」
ふと、奏汰が顔を上げ、横に座る少年の瞳をまっすぐに見つめる。そして、自身の両方の掌で、少年の両手を柔らかく包み込んで、ふんわりと微笑を浮かべた。
空気にのまれるように、少年は静かに首を縦に振る。その拍子に、足を浸していただけの水面に波紋が広がる。
突然のことに少しだけ、その身を強張らせたが、……すべては杞憂に終わる。
『先輩は……なんでもお見通しなんですね』
少年は、身体が軽くなったように感じた。――そう、きっと肩の荷がおりたのだろう。ここ最近の少年を取り巻く "悪夢" から解放されたかのように。
『ありがとうございます』と言って、目元を拭った少年は持参していたタオルで水を拭き取って、奏汰に背を向けて校舎の方へと歩いていく。
その後ろ姿を見送って、奏汰は再び水の中へと身体を沈める。自嘲気味に呟いたその言葉は、水飛沫とともに弾けて消えた。
「だって、ぼくは〔かみさま〕ですから…」
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Episode41+悔いなく+→←Episode39+みえたミライ+
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若宮(スイス/シャラルー☆)(プロフ) - Seturoさん» 入力前の状態ですと、デフォルトで『なまえ』という表記になってしまいます。『カタカナで』の欄も同様です。今一度、ご確認の方よろしくお願いいたします。入力してもなお、『なまえ』という表記のままであった場合には、またコメントを頂ければ助かります。 (2022年10月25日 19時) (レス) id: 6137a49408 (このIDを非表示/違反報告)
若宮(スイス/シャラルー☆)(プロフ) - Seturoさん» こんばんは。コメントありがとうございます。単刀直入にお話しますね。『なまえ』という文字から変わっていないとのことですが、全Episodeの一番下〜評価のすぐ上の『ひらがなで』という欄の入力はお済みでしょうか? (2022年10月25日 19時) (レス) id: 6137a49408 (このIDを非表示/違反報告)
Seturo - すいません💦多分主人公の名前が入るところが、なまえって文字から変わってないです💦 (2022年10月25日 17時) (レス) @page40 id: c7673ae0d0 (このIDを非表示/違反報告)
乱数(プロフ) - んん……身長は、165~168cmとかがいいんじゃないかなぁ…と思いますね……無理に変えなくていいですよ!? (2020年12月24日 4時) (レス) id: a4b666bcbc (このIDを非表示/違反報告)
シャラルー☆(スイス)(プロフ) - 乱数さん» コメントありがとうございます。あんスタの中では全体からしたら中間的身長ですし、アンデの中ではちびっこなので……(汗)設定的にはちょっぴり高くできたかな…?程度なんですよね。でもまあ、私的にも170cmは高いのでは?なぁんて思っちゃってます笑 (2020年12月16日 22時) (レス) id: 705dc09b7e (このIDを非表示/違反報告)
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