【あんスタ】兄嫌いと兄者嫌い【男主】

Episode２８＋チョ〜うざぁい＋ ページ29

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　玲明学園から出ると、空はすでに茜色に染まっていた。だいぶ長い間、彼らと話し込んでしまっていたようだ。悶々とした頭のまま、少年は帰路につく。もちろん、向かう先は昨日約束した衣更妹(まいちゃん)のいる衣更家だ。



　玲明学園から乗った電車の中、少年はゆっくりと沈む夕日をぼうっと眺めた。
　【アイドルを辞める(・・・・・・・・)】。巴に言われたその言葉だけが頭とこころで反芻された。定期的な揺れに身を任せ、少年は車内アナウンスをBGMのように右から左へと聞き流した。 " 夢ノ咲学院駅ー、夢ノ咲学院駅ー、扉がしまりまーす " と独特のイントネーションで流れたアナウンスに、扉が閉まるすんでの所で我に返り、慌てて列車から飛び降りる。傍から見てもわかりやすいくらいの呆けようだ。
　核心を突かれる、ということがどれだけ痛ましいことか。Aは無意識のうちに歯を食いしばっていた。ぎりり、と嫌な音が少年の中で響く中、通り過ぎた改札の先には見知った灰色の髪の青年が壁にもたれ、スマホを弄っていた。




　刹那、言いようのない焦りが少年の体を物凄い勢いで巡った。レジ袋に入っているドライアイスがシャリと音を立てながら溶けてゆく。それに比例するかのように少年の額にもすーっと汗がつたった。鞄を背負いなおし、その青年から少し離れた所を早歩きで通過する―――。―――いや、通過し終えるところだった。


　ガッチリと横から掴まれた腕は、いくら藻掻こうと動かしても微動だにしない。そのくらい、強い力で掴まれたのだ。




『……離して』



「嫌に決まってるでしょ」

『……チッ』

「はあ？ 何で俺が舌打ちされなきゃいけないのぉ!? チョ〜うざぁい」

『……何。何か用？』

「ふん、まずは俺の質問に答えなよぉ。学校までさぼってどこに行く気なわけ？」

『別に。どこだっていいでしょ。アンタに関係ない』

「関係ないわけないでしょ。……自覚あるのか知らないけど、アンタは俺の弟なわけ。アンタの評価が俺にも響く。わかってないわけないよねぇ？」



　―――わかってないわけがない。
　わかりきったような口を利くな、と下から青年を睨み上げるも、特に効果は無し。相手は怯むわけでもなく、ただその似たような顔で睨みを利かせ返しただけだった。




「何なの、その眼。…俺に何かあるならちゃんと言いなよ」

『……別に』

「……ならっ!!」

『帰る。...俺に構うなよ、チョ〜うざぁい』







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