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side.黄
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泣き叫びたくても、それが出来ない。
大毅の髪を撫でたり、頰をなぞったり、適当な時間を過ごしていると
黄「鼻血…?」
大毅の鼻から血が出てきた。
こういうことは珍しいことやないけど、いざとなると少し焦る。
仕方なく担当医を呼んだ。
黄「…なんですか、これ」
渡されたのは売店の袋。
中身はマジックペンと、
黄「…なんやねん、」
唇グミという、唇の形をしたグミやった。
大毅の好きそうなグミ。
大毅はこれを買いに行って、病室に戻る途中の階段から落ちたらしい。
焦っていたのか、急に具合が悪くなったのかは分からへんけど。
発見された時にはもう既に手遅れな状態やった、と担当医は悔しそうに言った。
「人の家に行くんやから、なんか持って行かな失礼やろ?」
と、大毅は話していたらしい。
こういうところは流石、しっかりしている。
…やけど、チョイスが悪意しか感じない。
一緒にマジックペンも買っていたということは、何かメッセージでも書いてくれようとしていたんやろうか。
「淳太の唇の2分の1サイズ!!」とか書きそうやな、アイツ。
黄「ふ…っ 、 ぅ…」
そんなことを考えていたら、涙が溢れて止まらなくなった。
本当に、
本当に大毅はいなくなってしまったんや。
もう二度と話すことも、触れ合うことも出来ないんや。
黄「大毅……ッ!」
いつかはこんな時が来ると分かっていたけれど、もう少し先の話やと思ってた。
もう少しだけ、一緒におれると思ってた。
現実は、そう甘くはなかった。
声にならない声で泣いて、
大毅がこの世界からいなくなってしまったことを受け入れなければならないことに苦しんで。
気付けば、部屋の中はまた大毅と2人きりになっていた。
顔を上げると、大毅の鼻に詰められた綿に血が滲んでいるのが目に入る。
頭の包帯にも、少し滲んでいた。
大毅が、ちゃんと生きていた証の赤。
やけど、
黄「…相当カッコ悪いで、 気付いてへんやろ」
やっぱり大毅は最期も少しダサかった。
黄「… あ 、 0時過ぎとるよ。 今日やね、……デート」
その少しだけダサくて不器用なところが、大好きやったんやけどな。
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rainbow(プロフ) - 何度読んでも毎回泣いてしまいます(泣)こんな素敵な作品に出会えて幸せです。素敵な作品ありがとうございます! (2021年12月24日 8時) (レス) id: 92cfee10c1 (このIDを非表示/違反報告)
モム(プロフ) - あーさんさん» コメントありがとうございます( ; ; )1年経った今でも読んでくださって、嬉しいコメントを頂けるなんて… すっごく嬉しいです、ありがとうございます( ; ; ) (2020年4月4日 9時) (レス) id: dc108877f5 (このIDを非表示/違反報告)
あーさん(プロフ) - こんな夜分にすみません。作成から一年経った今読ませていただいたのですが、切なさというかなんというか最後特に一つ一つが心に染みて号泣してしまいました。素敵なお話ありがとうございます (2020年4月4日 3時) (レス) id: aeab4f87a2 (このIDを非表示/違反報告)
モム(プロフ) - けーた。さん» いつも温かいコメントありがとうございます( ; ; )そんな風に思って頂けて私も幸せです( ; ; ) (2019年6月15日 18時) (レス) id: 42274ec8ec (このIDを非表示/違反報告)
モム(プロフ) - 重岡澪那さん» コメントありがとうございます。最後まで読んで頂けて嬉しいです( ; ; ) (2019年6月15日 18時) (レス) id: 42274ec8ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:モム | 作成日時:2019年3月30日 20時