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11.祈り -トロデーン城- ページ14

みんなを不自然に振り切ってしまったな…。
Aは、優しいみんなへの罪悪感と、
目の前のユイの変わり果てた姿を見て胸が押しつぶされそうな思いだった。

ユイの表情を見るに、きっと怖い思いをしたのだろう。
そう思うと涙が止まらない。
魔物に見つからないよう静かにAは泣き続ける。

私だけが辛いわけじゃない。
そう思うとみんなの前で泣きたくなくて、なんとかこらえてきた。
でも、呪いを目の当たりにすると、ましてや仲の良かった妹となると
ドルマゲスを許せない気持ちと悲しさが押し寄せてくる。


「やっぱりここだったか」
背後からククールの声がして、びくっと肩を震わせる。
魔物ではなくて安堵したものの、顔がぐちゃぐちゃだ。
「ごめん。すぐ戻ろうと思ったんだけど」
涙を拭って背を向けたまま、Aは答えた。
「仲のいい姉妹だったんだな…。余計辛いよな」
「あ…ごめんね」
マイエラ修道院での、ククールの兄との出来事を思い出す。
唯一のお兄さんとは生まれの事情から確執があり、
親のように育ててくれた院長は目の前で殺されてしまった。
ゼシカだって、大好きなお兄さんはもう帰らぬ人となったのだ。
みんな計り知れない辛さを負っても毅然としているのに、
私は自分の感情ばかりで、本当に情けないな。

そんなAの想いを汲むようにククールは話す。
「きっと妹さんとこのお城にいろんな思い出があって、
それがこんな状況で思い出させられるなんて辛いよな」
ククールはユイに近づく。

「すぐに今なんとかしてやれないのが悔しいが、一緒に悲しみを背負って、ドルマゲスを倒すことを誓うよ」

そう言うとククールはロザリオを取り出し、跪いて祈りを捧げる。

誰かの助けに、力になりたくて僧侶になったことを
祈るククールをみてAは思い出す。
その姿はただ美しくて、ここが呪われた城であることを忘れそうだ。

「ククール、本当にありがとう」
立ち上がったククールの胸に思わずAは顔をうずめる。ククールは一瞬驚くも、背中をぽんぽんと叩き、落ち着かせてくれた。
「祈りなんて気休めだと思っていたが、そう言われると聖堂騎士団でよかったよ」

ユイにしばし別れを告げ、Aはその手を握った。
わずかに温かい。
この呪いは必ず私たちが払ってみせる。

Aはククールの祈りと共に固く心に誓った。

12. サポートコンビの苦難-モグラのアジト-→←10.悲しみの再会 -トロデーン城-



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yuki(プロフ) - 雪娘さん» はじめまして!読んで頂いて、とても嬉しい感想まで送っていただき、本当にありがとうございます!!私自身、ゲームを再履修しつつ楽しみながらまったり更新していますが、まだまだ続く予定ですのでよろしければ楽しんでいってもらえれば幸いです。 (2022年7月1日 13時) (レス) id: 83e0478cb4 (このIDを非表示/違反報告)
雪娘(プロフ) - 初めまして。最近ドラクエにハマって、ククール好きかもと思っていたところに私好みの文章と夢主な作品だったので思わず感想送ってしまいました。続き楽しみにしてます。 (2022年7月1日 3時) (レス) id: 4b3493cea0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:yuki | 作成日時:2021年12月30日 23時

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