可哀想な女に、花 ページ31
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自分の指でそこの潤みを誘って、彼に跨がった。
沈め、呑み込んでゆく――――拡げられる圧迫感と、カラダの中心に埋まる熱。
あんしんする。
わたしは生きてる。
今日も、こうして感じられる。
「……A」
身体の隅々まで満ちる充足感は。
快楽でも、感情でも、愛でもなんでもなくて。
「――――…あ」
だれかの体温と、いま、こうして求められているという事実――――
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「帰るん？」
ラグジュアリーなホテルの、シャワールーム。
水を滴らせながら顔を出した彼は、帰り支度をするわたしを見てなんとも言えない顔をした。
「もう終電ないで？」
傍らのベッドはぐちゃぐちゃに乱れていて、つい先ほどまでの行為の激しさを物語っている。
わたしは服を身につけながら、それを思い出していた。
手。
足。
骨。
粘膜と、体液と。
全部がいっしょくたになって、まるで飢えたように肉を求められたあの空間で、わたしはただの女だった。
女であることがすべての、可哀想な、女だった。
「タクシー拾うから、いい」
「……だいぶ夜も深いし」
「明日も仕事だから」
「ちょっ」
ドアに向かおうとした手を、ぎゅっと掴まれ引き止められた。
わたしはあきれて振り返った。
まっすぐな目が、しずかにこちらを見下ろしていた。
このひとの目が――――きらいだ。
顔を背け、その手をそっと振りほどく。
「……足りないなら、他の人とやって」
きらいだ。
彼とわたしとでは、きっと、一生分かり合えることはないだろう。
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その夜が明けた、朝。
ごはんを食べ、出勤のため着替えようと服を脱ぐと、ダイニングで食パンをかじっていた妹がぎょっとした顔をする。
「お姉ちゃ……その身体」
「え？」
言われて姿見に映して、ようやく異変に気がつく。
身体中にびっしりと散りばめられた赤い痕。
鎖骨、胸、肩、二の腕、腹、太腿。
その数には狂気すら感じられた。
でも。
わたしが一番ぞっとしたのは。
この夥しい数のそれを付けられていたことすら
まったく記憶にない昨夜の自分自身だった。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
