真昼の憂鬱 ページ3
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「お姉ちゃん!お疲れ!」
すらりと高い背、はっきりとした目鼻立ち。
2つ歳下の実妹である麻結は、はじけるような笑顔でわっとわたしを抱きしめた。
欧米人の挨拶みたいに。
「麻結、どうしたの?こんなとこまで来て」
「だってお姉ちゃん、朝起きたらもう居ないんだもん。今夜のパーティーのこと、まだちゃんと話してなかったのに!」
コンビニのドアを潜りながら、麻結の話に耳を傾ける。
パーティー。
それはとんでもなく気後れのする横文字で、わたしのような女には到底縁のないもの……のはず、だが。
「……麻結。何度も言うけど、わたしは――」
「ああいう目まぐるしい場所はきらいなの、でしょ?もう聞き飽きたよ〜、それ」
「だったらなんで毎回わたしを――」
「麻結はお姉ちゃんと一緒に行きたいんだもん!」
堂々巡りだ、と、いつも思う。
ぐるぐる、ぐるぐる、着地点の見えない会話。
買いものカゴには飲みものと、適当に手に取ったおにぎりがふたつ――――おまけに麻結が投げ入れたチョコレートも。
麻結はかわいい。
明るくて、甘え上手で、すこしだけ我儘で……
「ねえ、お姉ちゃんってばぁ」
わたしとは、まるで正反対。
「仕事、夕方には終わるんでしょ?サタデーナイトだよ?ねね、楽しまなきゃ損だと思わない?」
「…………もう、わかったから」
土曜日の昼下がり。
ハイブランドの服で統一した彼女と、職場の指定ジャージを着たわたしとでは、姉妹、なんて関係性は限りなく遠く、きっと友だちにすら見えないだろう。
顔も似てなければ、姿も性格も、
何もかも……似ていない。
結局、今回もまたこちらが折れるしかないのだ。
かわいい妹に押し切られる形で取り付けた予定は、でもわたしを、まったく憂鬱にさせる。
「じゃあ、17時に迎えにくるからね」
たのしげに、心底幸福そうに、アイスコーヒー片手に去っていくクリーム色の軽自動車。
わたしはそれを、コンビニの駐車場からぼんやりと眺めて見送った。
交差点の流れに乗って行進していく後ろ姿を、見えなくなるまで。
―凍りついた翼―
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…!本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします! (2018年9月28日 0時) (レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます! (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べに | 作成日時:2018年9月11日 21時