くりかえし ページ14
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三崎さんから交際の申し出を受けたのは、もう数ヶ月前のことだ。
わたしはもちろん丁重に断った。
でも彼は、これから振り向かせるなどと言って、わたしの返事を受け入れることはなかった。
いつもしずかでおだやかな彼の目に、おどろくほどの情熱を見たのは、そのときがはじめてだった。
夜。
部活後、約束通り。
わたしたちは三崎さんの車に乗り、渋谷の繁華街へ、軽くごはんを食べに向かった。
彼は大きなステーキをノンアルコールビールで流し、わたしはサラダとあっさりした肉を、烏龍茶でゆっくりと飲み込んだ。
帰り道、街のショーウィンドウで見つけた真新しいパスケースを買おうとしたら、彼がすかさず財布を取り出すから、
「いいよ、自分で買うよ」
「いいの。俺がそうしたいから」
「…………ありがとう」
三崎さんはやさしい。
たぶん、それでいてとても誠実なひとだ。
家まで送り届けてもらい、去り際には、右手の指をそっと握りしめられた。
わたしは動揺しなかったけど、彼は緊張しているようだった。
「じゃあ、またね」
そう言って立ち去る横顔が、わずかに赤く染まっていた。
オートロックのマンション。
その５階の角部屋、広めの1LDKが、わたしと麻結の城だ。
玄関は暗く、麻結はマレーシアへのフライトで――彼女はキャビンアテンダントの仕事をしている。乗るのは主に国際線だ――家を空けている。
テレビを点けて風呂に入り、崩れるようにシーツに眠った。
相棒のノートパソコンが目に入ったが、何もする気が起きなかった。
毎日がただのくりかえしであることに気づいたのは、いつだったろう。
朝が来るたびに目覚め、昼を生き、夕方に深呼吸して、また夜に沈む。
その淀みのないくりかえしがわたしはとてもきらいで、ふとした瞬間に途方に暮れてしまうのだった。
だから抗いたくて、常に真新しい一日、真新しいわたしをそこに当てはめた。
ぐるぐると似たものに囲まれ続けているうちに、手や身体や脳みそがほどけ、自分がまるでスライムやゼリーのようなどろどろとした、得体のしれないものに変貌してしまうような気がした。
だからわたしはおとなになりたくなかった。
聞き分けがよく、利口で、四角い水槽のような世界に収まるおとなには、なりたくなかったのだ。
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
