サッカーボール ページ13
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「ああ、水無月先生」
「おつかれさまです」
ここ、古豪の男子サッカー部の相野監督――雇われ監督で、教員免許を持っていない――を中心に、部長やコーチが今度の大会について話を進めているようだった。
形だけ、わたしもその輪に参加する。
生徒たちの練習が本格的に始まると、主な仕事は、ほとんどマネージャー業務へと移る。
強豪として知られるサッカー部は女子禁制で、古くさい『恋愛禁止令』が部員一同に出される中、部費等大人の事情による人数合わせのため、わたしは顧問に就任している。
もちろん指導できるような技能は持ち合わせていないし、こうして週に何日か、部に顔を出してはお茶汲み係のようなことをやっているのだ。
今だってほら、だれに言われるわけでもなく部室の前を掃除しているけど。
「お、Aちゃんありがと〜！」
「水無月せんせ、オレ次の大会ベンチ入りできるかもしれないんだ」
生徒たちは、問答無用でかわいい。
部員に限らず、教え子たちはみんな。
それだけは、言い切れる。
「Aさん」
近づく足音。
土を踏みしめる、力強いそれ。
振り向くと、サッカーボールを脇に抱えた青年が立っている。
「……三崎さん」
三崎柊介はこの学校の卒業生で、部のOB――現在は神奈川県でJ2リーグのチームに所属している――プロのサッカー選手だ。
たまにこうして部の練習を見に来てくれる。
わたしとは歳がおなじということもあって、部活動以外に、プライベートでも何度か食事に行ったことがある。
「久しぶり。元気だった？」
「……うん。三崎さんは？」
「俺も元気。まあ、リハビリ中だから試合には出てないけどね」
三崎さんは肩をすくめて言う。
彼は冬に膝の怪我をしてから、サッカー選手としての活動を休んでいた。
「足は治りそう？」
わたしは言い、ほうきを持つ手を止めて、
「今度の大会は見に来るの？」
続けて質問を重ねた。
三崎さんは、その両方にわらって答える。
「来月あたりには復帰できるはずだよ。こいつらの大会は、ちゃんと見に行くし指導もする」
「……そう」
わたしも笑い、彼はあんしんしたように眉を垂れた。
日に焼けた横顔。
「ねえ。今日このあと、空いてるかな？」
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べに(プロフ) - 516516516tさん» こちらのほうも…！本当にありがとうございます(T T)双子とはまったくテイストが違いますが、これからもよろしくお願いいたします！ (2018年9月28日 0時) (
レス) id: c68c31e30a (このIDを非表示/違反報告)
516516516t(プロフ) - 双子と共にこちらも読んでいます！ (2018年9月26日 21時) (レス) id: 06c5e90194 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：べに
| 作成日時：2018年9月11日 21時
