弐 ページ4
天元の朝は遅い。忍は基本的に夜の帳が降りてから暗躍することがほとんどであるため、天元がと言うよりはこの里自体が、と表したほうが正しいのかもしれない。
「...ふわぁ...。」
朝餉(世間では既に昼餉と言っても差し支えないのかもしれないが)を取るべく広間に向かっていた天元は噛み殺しきれない欠伸をして、登り切った太陽の眩しさに目を細める。任務終わりの寝不足の状態での日射しはダメージが三倍増しだ。
宇髄の屋敷では所謂お手伝いさん、というものがいない。故に、屋敷にいるくノ一が交代で膳を用意する。もちろん、当番でなくても好んで厨房に立つものもいるが。
普段なら朝飯の1回や2回食べなくてもどうってことは無いが今日ばかりは駄目だ。なんせ、今日の炊事当番はAなのだから。
Aはこの屋敷の中でも随一と言っていい程料理が上手い。天元の兄の許嫁としてこの屋敷に来た時、花嫁修業の一環として覚えたらしい。くノ一と言えど出来た方がもちろん良いし、任務の時に一番毒を盛りやすい厨房にも潜入できる。
それは理解しているのだが、複雑な思いが交差してなんだかモヤモヤする。Aの料理を食べられて嬉しい反面、他の男のために覚えた料理と言うのが何とも...という感じであろう。
そんなことを考えながら廊下を歩いているとあっという間に広間に到着する。そこには既にAが座っていて、頷くと厨房の方へ消えていった。
基本的に食事を大人数で食べる習慣はない為、こうして当番の者が一定の時刻まで待機して随時膳を用意するといった具合なのである。
天元はなんだか待っているのも落ち着かないのでよそうのを手伝おうと腰を上げた。
その選択を後で後悔することなるとは知らずに。
______________
見てはいけないものを見てしまった気がする。天元はガクリと落ち込んだ。厨房で見てしまったのだ。
Aが、他の男と接吻している所を。
「はぁぁあ...。」
陰になっていて相手の男の顔はわからなかったが接吻していたということはそういう事なのだろう。Aも年頃だ、良い人がいてもおかしくはない。むしろ、18なら遅いくらいだ。
元々宇髄の頭領筋の嫁になる人だったのだからそう易々と他の男は近づいて来ないだろうと油断していたらいつの間にか掻っ攫われてしまった。
じくじくと痛む胸を押さえ天元は一回も振り返ることなく広間に戻り再度溜息をつく。
こうして、天元の恋は始まる前に終わったのである。
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美貴(プロフ) - 早く続きが読みたくなりました。応援してます。頑張って下さい。 (2020年2月3日 22時) (
レス) id: 90d314c778 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆友(プロフ) - 夏蜜柑さん» コメントありがとうございます！出来るだけ速く書こうと思ってますので、これからも応援お願いします！！ (2020年1月26日 10時) (レス) id: 3d9f00433a (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑 - このストーリー好きです\(//∇//)\)更新頑張ってください！応援してます (2020年1月26日 9時) (レス) id: 1f2db930a1 (このIDを非表示/違反報告)
竜胆友(プロフ) - ルイさん» ありがとうございます！亀更新ですが頑張ります！！ (2019年11月24日 13時) (レス) id: 3d9f00433a (このIDを非表示/違反報告)
ルイ - すごく面白いです。更新頑張ってください。 (2019年11月24日 12時) (レス) id: e495d80177 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：竜胆友 | 作成日時：2019年11月16日 15時
