きみがいるから仕方ない。 (ページ34)

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言わない　2 ページ34

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…お願い、聞き逃していて…

願ってはみたものの
音楽もかけてない部屋では小さな呟きも届いてしまう。

あーあー…、ジェスがスマホから目を外して俺を見ているじゃん。

「…なし。今のは、なし。何も言ってないからね」

大したことじゃないよって笑顔付きで誤魔化しにかかった俺の言葉に、
ジェスは手帳型のケースを閉じてスマホをコーヒーテーブルに置く。

…誤魔化されないのね。
……そうやって、話をする時はちゃんとするとこ、好きだよ。

「こーち？今日は何を気にしてんの」

…今日は、とか言わないで欲しい。
いつも気にしてるみたいじゃん。
確かに気にしいだけど、そこまで気弱じゃないと思いたい。

「なんにも。言ってないって言ったじゃん」
「ふーーーん…」

ともかくシラを切るしかない俺は、全然違う話題に切り替えて、あからさまにこの話は終わりにすることにする。

「なんかあったかいもの飲もっかなあ。ジェスは？」
「いらない。それよりも、」

ジェスは膝の上から腕を伸ばして、俺の首に巻きつけ頭を引き寄せた。

そのまま軽く口づけされる。

キスをしながら、ジェスの手が洋服の上、身体の線を辿る。
手がシャツの中に入って、ざらっとした手の表面が肋骨に当たったとき
「！」

骨張った自分の身体を思い出して、反射的にその手を押さえてしまった。

「あ、……」

なんでこんなことした俺。
今、その手を止めたって、自分が急に変われるわけはないのに。

きっとジェスにも変に思われた……。