心配 ページ35
次に目が覚めた時には、なんとも言えない空色だった。
昼だといえば明るすぎて、夜だといえば暗すぎる、そんな時刻。
さっきまでの倦怠感はそれほどなく、起き上がろうとすれば背中に激痛が走った。
『ぅ゛っ…ってぇぇ…!!』
声にもならない叫び。
今までに経験したことのない苦痛。
変な汗が全身に流れる。
『…っ!!…んだよっ…これぇ…!!』
痛みに悶えていれば、襖が開いた。
誰かと思いそちらへ顔を向けると、髪の濡れた五虎退と鶴丸と呼ばれていた白い青年。そして、見慣れない黒髪の少年の3人がいた。
「!!主様ぁ！！」
五虎退は俺を見るなり泣きっ面で飛び込んできた。
ついでに虎五匹を連れて。
いやまてやばい。今は何もせずとも傷が痛むのに、人一人＋小虎五匹の衝撃を加えるとどうなるかなど、一目瞭然。というか、見なくてもわかる。
当然…
『…ぅっ!!ぐっ…!!!』
腹へのダメージと背中の傷のダメージが掛け合わされ、どうにもならない地獄絵図。
「五虎退。やめとけ、そいつぁ一応怪我人だ。傷も塞がったが薄皮が張り始めた程度だ、傷が開いちまう」
黒髪の少年が淡々と言った。
その言葉に五虎退が飛び退いた。
「ご、ごめんなさい主様！大丈夫ですか…？」
『あ…あぁ、なんてことないさ。』
嘘、大嘘、すげぇやばかった。三途の川が見えた。
五虎退と虎たちには悪いがどいてもらって、ズキズキと痛む背中の傷を隠し、へらっと笑って見せた。
『っ…心配かけちまったみたいだな、悪い。もう大丈夫だ。だから、泣くな泣くな』
ぽんぽんと頭を撫でてやると、余計に涙ぐんでしまう。
「ぅ…嘘…つかないでください…」
『へ？』
「バレバレだぜ？あんだけ深い傷なんだ、一日やそこらで痛みが引くほど甘いもんじゃねぇっての」
黒髪の少年が五虎退の代わりに話した。
この少年が治療してくれたのだろうか。
『え…っと、君が治療してくれたのか？』
「…あぁ、不本意ながらな。俺っち的にはそのままくたばってくれても良かったんだが、そうすりゃあ五虎退も鶴丸の旦那も悲しむことになるからな」
『そっか、ありがとうな。おかげで助かっちまった』
自然と崩れた俺の顔を、少年は驚いたように目を見開いている。
「…なんとなくわかった気がする」
『ん？』
「なんでもねぇよ」
よく聞こえなかったけれど、聞こえちゃいけないことだったのか？
慌てたように強く言いきられた。
『そっか。』
深くは聞かないでおこう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 570人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します！出来たら全員のキャラに愛されたいです！（恋愛的に）あと落ちは出来れば全員落ちみたいなのが見てみたいです！無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年12月13日 7時) (
レス) @page8 id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いずなさん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます。五虎退の口調の件ですが、具体的なご意見をいただければと思います。今作品の五虎退はしっかり者という感じで前田や平野等の口調を参考に作っています。変というのはこう言ったオリジナル設定の問題でしょうか。 (2018年2月19日 20時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - 五虎退ちゃん口調が、へんです…,はやめのかいぜんを。 (2018年2月15日 19時) (レス) id: cab3b979f4 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 冬歌@病弱堕天使系審神者さん» 返信ともに遅くなって申し訳ございません。完全なる誤字でございました。修正させていただきます、本当に申し訳ございませんでした。 (2017年3月15日 19時) (レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
冬歌@病弱堕天使系審神者(プロフ) - 面白いのですが、一つ気になったので書かせていただきます。 「刀剣男子」ではなく「刀剣男士」です。そのように間違える方も多いのでしょうがないのかなとは思いますが、直していただけると嬉しいです。 (2017年3月13日 12時) (レス) id: 5ef9420f52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩香 | 作成日時：2016年7月15日 21時
