助けてください ページ29
｢主様ぁ！！｣
倒れ込む主様を支えたのは鶴丸さんだった。
彼も声を荒らげて呼びかけた。
｢…!!おい！起きろ！っ…!!目を開けろ！おい！｣
主様の体を揺すって、必死に目を開けるよう叫んだ。
が、主様は目を開けることはなく、ただ微かに開いた口から苦しげな息が漏れる。
「ぁ主様…？…ゃ…やだっ…｣
声が出ない。
足が石になったように重くて、動かない。
死んじゃう…
主様…
もう、あの優しい声は聞けないのか。
あの温かい手で触れてくれないのか。
あの綺麗な笑顔を見ることは出来ないのか。
いつも見る主様の顔は、どこか嬉しそうで優しかった。
暖かい空気の中、本当の家族のように振る舞ってくれた彼がどうしてこんな目に遭わなきゃいけない。
なぜ。
なぜ。
考え出せばきりがなく、ここ数週間の沢山の思い出が延々と蘇る。
同時にまた、当たることの出来ない怒りがこみ上げる。
でも、やり場がない怒りは涙となりぼろぼろとこぼれ落ちるだけ。
無力だった。
｢五虎退！！｣
切羽詰まった大声に、現実に戻された。
｢泣いてる暇なんてないぞ、助けたいんだろ？諦めんな！！｣
死んでない！！！
その声を引き金とし、僕の足が動いた。
部屋を飛び出して、長く暗い廊下をただひたすらに走った。
迷うことは無い。目的の部屋へ一直線に走る。
どれほど走ったかわからないが、それほど遠くはなかった。
きちんと閉められた障子を勢い良く開ける。
「薬研兄さん…！！」
此処は薬研兄さんの部屋。正しく言えば、資料部屋だけれど。
丁度よく、彼は中にいてくれた。
藤色の瞳を見開いてこちらを凝視する。
説明してる暇なんてない、急がないと…!!
「五虎退…？お前今までどこに！一兄が探してっ」
「薬研兄さん！！」
彼の言葉を遮って大きな声を出した。
僕が大声を上げることはまずなかった。だからだろうか、吐き出しかけた言葉を呑み込んでいた。
「お願いします、助けてください…！！このままじゃ主様がっ…主様が死んじゃう！！お願いします！！助けてください！！お願いします！！」
膝をつき、畳に額をこすりつけて懇願した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 570人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奥山乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します！出来たら全員のキャラに愛されたいです！（恋愛的に）あと落ちは出来れば全員落ちみたいなのが見てみたいです！無理せずに頑張ってくださいね！ (2022年12月13日 7時) (
レス) @page8 id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - いずなさん» 返信遅くなりすみません、コメントありがとうございます。五虎退の口調の件ですが、具体的なご意見をいただければと思います。今作品の五虎退はしっかり者という感じで前田や平野等の口調を参考に作っています。変というのはこう言ったオリジナル設定の問題でしょうか。 (2018年2月19日 20時) (レス) id: c14942e9c6 (このIDを非表示/違反報告)
いずな - 五虎退ちゃん口調が、へんです…,はやめのかいぜんを。 (2018年2月15日 19時) (レス) id: cab3b979f4 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 冬歌@病弱堕天使系審神者さん» 返信ともに遅くなって申し訳ございません。完全なる誤字でございました。修正させていただきます、本当に申し訳ございませんでした。 (2017年3月15日 19時) (レス) id: 5d501a6648 (このIDを非表示/違反報告)
冬歌@病弱堕天使系審神者(プロフ) - 面白いのですが、一つ気になったので書かせていただきます。 「刀剣男子」ではなく「刀剣男士」です。そのように間違える方も多いのでしょうがないのかなとは思いますが、直していただけると嬉しいです。 (2017年3月13日 12時) (レス) id: 5ef9420f52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：彩香 | 作成日時：2016年7月15日 21時
