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握手を求めるでもなく、サインくださいでもなく、
一緒に写真いいですか？なんてこともないまま
一度出てきた部屋に戻ろうとしている。




おいおい、なに戻ろうとしてんの？
なにか用事があるから出てきたんじゃないの？
俺の態度に動揺してるの、丸見えなんだよな・・・。




「ねえ、ちょっとこっち」

「え？！」




気が付けば、
その子の手首を掴んで引っ張っていた。


このままじゃ、洋平さん怖かったとか、
冷たかったとか機嫌悪かったとか、
その手のことを書かれるに決まってる。




「あのっ、洋平さんっ？！」

「折角会ったからたくさんお喋りしたいんでしょ？」

「えっ？それはそうですけど、でも、、
えぇ？！」




突然、俺に連れ去られた彼女は困惑している。




「ここ、俺の泊まってる部屋」

「えっ、え！？
、、、あ、私の部屋よりちょっと広い、かも」

「まあ、割りと普通の部屋に泊まってんだよね」




・・・てか、なにやってんだよ、俺は！




確かにファンは大事にしなきゃとは思うし、
さっきの態度で面倒になったのがバレてヤバいかな？
とは思ったけど！


なにもここまでやる必要はない！！！
これはこれで過剰サービスなんだよ！阿呆か！




「はあー、」




自分自身の行動に深いため息が出た。




てか、そうだよ。
全然ファンサービスとかする気分じゃなかったのに、、、




いつもならそういう時は適当にあしらうのに、
それが出来るのに




今日に限って冷たくし過ぎたかもって心配になったり
その反動で過剰にサービスしようとしたりしたのは
やっぱり精神的に不安定なせい？




きっと朝から続いてるこの鬱蒼とした気分も
昨日、重要なことを決めたせいだろうし、
それだけでこんな不安定になんの？




なんかもう、
弱すぎんだろ、俺、、、。




こんな自分、
早く取っ払って振り払ってしまいたいのに
それが出来なくて焦燥に駆られる。




先が心配な不安と焦り、
そこからくる苛つき。
そんな時に降って沸いた彼女という厄介ごと。




全てに追い詰められているような錯覚がした。





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