第九百訓 ページ45
_____夕立ちが照らす斜陽色の港。
ゴォォォ、と空からゆっくりと艦船が降りてくる。
大きな船が何隻も真選組を迎えに集まり、愛する江戸からの出発を今か今かと待ち構えていた。
そして目の前には、綺麗に列を作り並ぶ真選組全軍の背中。黒い背中は一つもないが……それでも、愛おしさが溢れてくる。
(……あぁ、行ってしまうんだなぁ)
ザザ、とその場によく響く波の音。それに誘われるつうんとした鼻の痛み。
いいや、哀愁なんてもんは昨日目が溶けてしまうほど泣いたから大丈夫。振り切ったはずだ。真選組は此処に、私の魂にいつまでも居るんだから。
近藤「学も無ェ、身分も無ェ、信じられるのはてめーの剣だけ。そいつ一つで一旗揚げてェ____そうして俺達は江戸に集まった」
『……っ、』
近藤「その江戸を、俺達は今日去らなきゃならんが……俺達の夢は終わりゃしねェ!」
頼もしい局長の声。いつもと変わらない真選組。嗚呼そうだ、私達は侍だ。江戸を守護せし侍。江戸を愛す侍。
.
.
近藤「____そして、帰ってこよう!!俺達の姐さんの元に!」
『……!』
近藤「笑顔で"ただいま"って、言ってやろうぜ」
…………そう、しみったれた涙なんかで飾る必要は無い。熱苦しい野郎共とのお別れなんざ私の下手くそな笑顔一つで充分だ。
そして____とびきりの"おかえり"を言ってやるんだ。
近藤「……姐さん!留守番、引き受けてくれるか」
『っ、はい……局長!!私の命に変えても!!!』
近藤「命に変えんのはやめようなー?」
ビシッ、!!!と堅苦しく敬礼。だけど顔は無礼講のしわくちゃな笑顔で。今までの感情ぜーーーんぶ振り切って、ただただ笑顔で。
どんどん船の中に入ろうと進んで遠ざかっていく野郎共の背中に向かい、すううう…………っ!!と息を大きく吸った。
そして発破をかけてやるつもりで大声で大声で……言ってやった。ただいまを期待して。
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さらば真選組篇、完
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実珠(プロフ) - しきしまさん» わーー!!ありがたいお言葉……!有難う御座いますただいまですーー!お待たせして申し訳ない…🙇🏻♀️ ちまちまとではありますがこれから更新していくので楽しみに待って頂けたら幸いです!!! (12月18日 21時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
実珠(プロフ) - あやさん» わわわ有難う御座います〜!!!待っていてくださったなんて!!光栄……!おまたせしてごめんなさい!、これから頑張っていきます!! (12月18日 21時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
しきしま(プロフ) - おかえりなさい〜!!更新待ってました!これからも頑張ってください! (12月18日 20時) (レス) @page44 id: b9707e3599 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 更新待ってました〜!! おかえりなさい! (12月18日 20時) (レス) @page44 id: 6508c9a6a6 (このIDを非表示/違反報告)
実真(プロフ) - 華さん» 発破かけて下さって本当にありがとうございますううう……!長らくお待たせしてしまい…申し訳ない🙇🏻♀️ これからはちまちま更新していく予定です……! (12月18日 19時) (レス) id: 5eb1e7fab0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:実珠 | 作成日時:2022年8月13日 0時