6 Seiya ページ48
Side 誠也
小島「…ほんまに、Aさんはそれでええんやな？」
A「…うん。大丈夫です。」
小島「分かった。
なら、明日の夜お母さんが暴れ始めたら、警察に電話して“母親の精神状態が悪くて、手に負えません”って話してや。
そのあとは…」
結局、Aは母親を保護してもらうことに決めたらしい。
……不服なんかじゃない。
ただ、誰かに頼るなんて選択肢もなかった高校時代の俺と
離れても、まだ母親に手を伸ばし続けるAの姿が
やけに重なってしまっただけ。
だから、もっとAには選択肢があることを…
小島「…誠也くん、誠也くん…！」
誠也「…っ！」
小島「話聞いとった？」
誠也「…ごめん、ちょっと考え事してもうてて」
小島「せやろな、誠也くんさっきから上の空やったもん。」
考え込んでたんか気づいたらAの姿は
事務所内になかった。
眉尻を下げて、少し困った顔をした小島。
真っ白な事務所の壁がやけに眩しい。
小島「……明日、Aちゃんのアパートの近くまで迎えに行ったってや？
事情聴取に捕まると、児相絡みになって厄介やから、通報したらすぐアパートから離れてもらうことにした。」
小島「…俺ら、所詮は他人やろ。
児相に保護されてもうたら、預かることも、身元引き受けるのも難しいんよ。
そのあとは、俺が代理人として無理やり話を通すつもり。」
誠也「分かった…小島、ありがとうな色々。」
小島「…別に本業やし、ええけど…
俺は誠也くんの方が心配やわ。Aさんよりも。」
丈よりも関係の浅い小島は、あんまり強くは言うてこれへん。
…だから、ビジネスライクで楽なやりとりが心地よかった。
たぶん、お互いにそう思ってた。
その小島が言うてくるって、相当、危ういんやろうな、俺。
小島「………Aさんのこと、誠也くんがどんな風に見てるかは知らへんし、
末澤家のことも、誠也くんと親父さんになにがあったのかも俺は詳しく知らんけど……
誠也くんとAさんは違う人間なんやで。誠也くん。
……自分が出来んかったこと、
Aさんに押し付けるのはあかんやろ。」
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作者名：こひな | 作成日時：2023年9月23日 21時
