閉館の時間 ページ6
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夕刻を告げる鐘の音と共に、本から視線を外した。
『もう閉館の時間なのね』
時間を忘れて読みふけった事に今になって気づくほど、今回手に取った本は魅力に溢れていたらしい。
手元にある本を早々に片付け、図書館を出ようと廊下を歩いていく。
すると朝見かけた軍服の2人が目に入った。
『ロス少尉とブロッシュ軍曹でいらしたのですね。お疲れ様です。』
そう、よく見ればアレックス様の部下であるマリア・ロス少尉と、デニー・ブロッシュ軍曹だったのだ。
アレックス様は、キャスリン様の兄上であり、アメストリス国軍の少佐を務めていらっしゃるお方だ。
このお2人とは、アレックス様に会った時などにお会いしたことがある為、顔見知りなのである。
マリア「こんにちは、Aさん。ここに居るということは今日はお休みなのね。」
デニー「君は本当に本が好きなんだね。休みの日くらい家でゆっくりしたらいいのに。」
僕ならそうするよ。と少し疲れた表情で呟くブロッシュ軍曹。なにか大変な仕事でも任されているのだろうか。
『何やらおつかれのようですね…。ご自愛ください。
私に手伝える事があるなら、いくらでも仰ってください。』
マリア「ありがとう、Aさん。その時は是非お願いしたいわ。」
デニー「……そういえば、Aさんは、錬金術に詳しくなかったっけ?」
なにやら思い出したようにブロッシュ軍曹は私に問いかけてきた。
『…詳しい……でしょうか…』
錬金術。
私にとって複雑な思いにしかならないものの名を聞いては、曇る表情。
出来ればもう…関わり合いにはなりたくない。そう思ってしまい、言葉を濁してしまった。
デニー「いやっ、違うんだったらいいんだ、ごめんよ!」
そんな私の表情を汲み取ってか、ブロッシュ軍曹は気を使い話を流してくれた。
私も、手伝えたならよかったのだけど。
『私の知識は、幼い頃で終わった知識なので…恐らくは今の錬金術に優るものはないと思います。
なので、錬金術以外の事ならなんでもお手伝いしますので、いつでもお使いください!』
辛気臭い空気にしたのが申し訳なかったので、めいいっぱいの笑顔で続けると、少しブロッシュ軍曹の表情も柔らかくなった気がした。
マリア「それじゃあ私たち仕事があるから。
また今度ゆっくり話しましょう。」
私は2人の邪魔をしては悪いと思い、軽く返してからその場を駆け足で立ち去った。
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柏餅(プロフ) - 神すぎますゥゥゥ! (3月21日 15時) (レス) @page33 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:YayoiSakura | 作成日時:2022年1月14日 10時