罪を侵して人を愛せず【鋼錬】 (ページ25)

今日:15 hit、昨日:63 hit、合計:56,409 hit

春じゃないですページ25

***

それから数時間後、目が覚めた私は、病院の一室で横たわっていた。

特に異常のなかった私は、直ぐに帰される事になり、その後数日は召使いの仕事をこなしていた。

同じ病院にエドも入院したらしいので、休日の今日はこれからお見舞いに行く事にしている。

結構な怪我をしていたから、流石に見に行かないと気が気でないのだ

『ロス少尉、お疲れ様です』

マリア｢やっと来たのね、彼、待ってるわよ｣

『…？なぜ？』

ロス少尉に、待ってると言われてもあまりピンと来ない。

私を？何かあったっけ。

マリア｢気が気じゃないみたいで…まぁ会えばわかるわ｣

『は、はぁ…失礼します…。』

エド、と声を発するのとほぼ同時に

エド｢A…お前…！！｣

血相を変えて、彼が駆け寄ってきては私の肩を掴む。

エド｢お前怪我は！？全然顔見せに来やがらないから…心配で…！｣

『怪我なんてしてないよ？ずっと仕事してたくらいだし…』

エド｢仕事だあ！？あんな事あったってのに…｣

なにか言いたそうにしながら、黙ってしまうエド。

『ごめんね、私ずっとお仕事休んでたからさ…今日やっとお休みをいただいて、やっと来れたの』

エドの目を見て、ゆっくりと話す。

不満そうな彼は納得したのか、私の肩を離す。

エド｢…何も無いなら…よかった｣

『うん、エドも、元気そうでよかったよ』

そうほほ笑みかけると、バツが悪そうに頭をかきながら彼はベッドへ戻って行った。

？｢ほう、こりゃエドにも春が来たか？｣

アル｢ヒューズ中佐もそう思いますか？｣

ベッドの傍では、なにやら机を囲んで数名がこちらを見ていた。

ヒューズ中佐と呼ばれた方と、アレックス様だった。

ヒューズ｢よお、俺はマース・ヒューズ。中佐だ。

よろしくな、えーと…｣

『A・イシュウォールトです。よろしくお願い致します。』

手を差し出されたので、握手を交わす。

人あたりの良さそうな彼に笑みを返すと、ヒューズ中佐はニヤニヤするばかりで、私もは困惑してしまう。

エド｢ちょうどAも来たし、話の続きしようぜ｣

ヒューズ｢おやー？もうあだ名で呼びあってるのかーそうかー｣

エド｢黙っててくれねえかな……｣

殺気を隠しもしないエドとヒューズ中佐のやり取りがおかしくて、アルと顔を見合わせては笑い合うのだった。

だって私たちは、恋仲ではないのだから。

***