ユリアーレ転生物語 (ページ49)

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第八話魔法薬学の校外実習(前) ページ49

というか、目を疑う。とてもとても懐かしい、ブレザーの制服……
ふんわりとした印象の、茶色がかった長い黒髪に、茶色がかった黒い目。紺色のブレザーの胸ポケットには、淡い水色のシャープペンを挿(さ)している。それは私が前世でよく使っていたものの色違いだ。
縄で縛られているのに辛(つら)そうな様子もなく、部屋の隅にちょこんと座っている。
｢どいうことだ。女の子が縄で縛られてるって……そういうプレイなのか？｣
｢馬鹿を言うな。鍵魔法は本格的だった。ここに閉じ込められてるんだ｣
｢冗談はよしてくれ！転移させられたと思ったら誘拐事件に遭遇って、嫌な予感しかしないんだ。おいルキア、何さっきからだんまり決め込んで……ルキア？｣
いつも口うるさい私がずっと黙り込んでいて、おそらく刮目(かつもく)して口を半開きにしているでしょうから、ノアとイライジャは不思議そうに眉を寄せ、お互いに顔を見合っていた。
｢ねえ君達、どこから来たの？｣
軽やかな少女の問いかけには、イライジャが答える。
｢俺達はケレアレンの生徒だ。そういう、あんたは？｣
｢あたし、皇宮から来たの。色々息苦しくって皇宮を抜け出して、レオルアンの街を散策してたんだけど、いきなり黒いマスクの悪党に拐われちゃった。でも仕方ないんだ。あたし…… “主人公” だから｣
そして「あっ」と思い出したように、彼女は名乗る。
｢あたしの名前はエリナ。異世界から来たんだ。地球の日本、っていうんだけど……って、わからないか｣
少女はクスクス笑ってたけど……私にはわかるわ。地球の日本がどのような場所なのか。
そして私は、この子のことも、その本名もよく知っていた。

加藤絵梨菜(えりな)。
前世の友人であり、私と同じ人を好きになった女の子だ。