ユリアーレ転生物語 (ページ48)

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第八話魔法薬学の校外実習(前) ページ48

だが遅かれ早かれ、学校の先生達が捜してくれるはずだ｣
｢どのくらいで先生達来るかしら｣
｢さあ……距離によるだろうな。どうしよう、明日だったら｣
ノアが落ち込んでいる。
無理もない。もし時間内に戻れなかったら、私達は課題をこなせなかったことになる。
救済措置はあるかもしれないが、少なくともベアトリスとの勝負には負けてしまう。せっかく高品質のリンの目薬を作ったのに……
｢なあ、向こうに小屋があるぞ｣
イライジャが少し進んだ場所に小屋があるのを見つけた。
急いでその小屋の前に行くと、ひっそりとしていて人の気配も無いが、とりあえずドアをノックする。誰かいればここがどこだかわかるかもしれないし……
｢誰も出てこないわね。空き家なのかな｣
｢いや……中に誰かいる。凄く、大きな魔力の持ち主。洞窟に流れていたのと同じ魔力だ｣
ノアはドアの向こう側を見据えるように、その目を細めていた。
彼のコンタクトレンズは魔力の流れを視覚的に捉えるので、この小屋に人の魔力があることを察知したようだ。
｢ドア、鍵がかかってるな。強力な鍵魔法だ｣
｢鍵魔法の解除なら、僕がやろう。そういうものの方がずっと得意だ｣
ノアはしゃがみ、鍵穴をその手で覆った。
一度目を閉じて、そしてスッと開けるだけで、カチッと鍵が開く。
呪文を唱えることなく、無詠唱。目に張り付けたレンズで行使されている魔法の仕組みを読み取り、絡み合った毛玉をほどくように解除する。しかも、とにかく素早い。
静かすぎて凄いことをやったように見えないところが凄いのだ。
｢いきなりやる気を出してるじゃないか、無口君｣
｢このまま戻れなかったら、僕は1班に入ることになる｣
｢それが凄く嫌なのね……｣
ノアの静かなる必死さに感謝しながら、鍵の開いたドアを押し「すみませーん……」と中に入る。不法侵入だが緊急事態なので許してほしい。いざという時に逃げられるよう、どこか及び腰で。
｢ノア、魔力の持ち主はどこ？｣
｢……この部屋だ｣
廊下の突き当たりにある部屋を、ノアが指差した。
一度深呼吸して、私がドアを開けると、

｢あれ……？あなた達は、あたしを拐(さら)った悪い人達じゃないんだね｣

驚いたことに、そこには縄で縛られた一人の少女がいた。
背後の窓から差し込む光を背負い、どこか神秘的な空気を纏(まと)って。
｢……え……｣
その少女を見て、私はじわりじわりと目を見開いた。