ユリアーレ転生物語 (ページ41)

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第八話魔法薬学の校外実習(前) ページ41

アリアが珍しく前に出る。そしてその掌(てのひら)を、岩の表面にくっつけながら、
｢マキ･カール･アリアス―――転移｣
彼女が呪文を唱えると、岩は跡形も無く忽然(こつぜん)と消えた。
｢転移魔法……」「本物だ」
ノアもイライジャもこれには驚いて、口も目も丸くさせていた。
｢凄い！この規模の転移魔法は、ものすごく高度なのに！｣
普通なら浮遊魔法を習得後に、三年生で習う魔法だ。物質量が大きればより難しい。
｢私の一族は “空間魔法” と “錬金術” を生業(なりわい)としてるの。きっと今頃、この島の別の場所に転移されてるんじゃない。例えば……ベアトリス･アキルの目の前とか｣
珍しくアリアが、意地悪くクスッと笑った。これはもう、歓迎会で「異国人は役立たず」と言われたことをずっと根に持っていた、そんな表情だ。
実際にベアトリスの目の前にあの大きな岩が転移されて、彼らの行く手を阻んでいたら面白いなと思っていたら……
どこからともなく、ベアトリスのお決まりの「ありえませんわ！」が聞こえてきたので、私達は思わず噴き出してしまった。

川の上流を目指して歩き進めていたら、いよいよお目当ての滝に出くわした。
｢見て。滝の周り、切り立った岩壁に、リンシダがびっしり生えてるわ｣
青々とした苔や植物も目立つが、リンシダも所々見つけることができる。
色が鮮やかな青緑色。羽状の葉はギザギザと切れ込みが入っていて、葉の裏側に魔力を溜め込んだ袋がくっついている。これを魔力袋と呼ぶ。
｢ほら。この葉の裏にくっついた魔力袋が、大きめでキラキラ光ってるでしょう？これが高品質のリンシダの特徴よ。魔力袋が弾ける時にリンッって音がするからリンシダって呼ばれてるのよ｣
タイミングよく、頭上に生えていたリンシダの魔力袋が弾けた。
リンッ、と涼やかな音の後、キラキラした魔力胞子が飛び散って、それが帯をなして漂う。
滝の側で、新鮮な水と大気の魔力を蓄え込んでいるため、高品質なリンシダが育つのだ。
｢さあ、最高品質のリンシダを探すわよ！｣
｢おー｣
私達は早速、この周辺を拠点にして最高品質のリンシダを探し始めた。
ライバル達はまだここを見つけておらず、先じて取り放題。
課題の “リンの目薬” を作るには、リンシダが十本は必要だ。最高品質のものを揃えたい……っ！
｢おい、見つけたぞ｣
｢……私が見つけたのより立派だわ。流石はノア……少し悔しい」
｢これはどう？｣